西本武史 福井大医学部神経科精神科助教

 【質問】前立腺肥大による頻尿で不眠症になりました。2009年に経尿道的前立腺手術を受け、頻尿は改善しました。しかし、2年近くたっても不眠症が直りません。いろいろな薬を飲みましたが、1日3~4時間しか眠れず、一度目が覚めると、その後はまったく眠れません。最近は、仕事をしていてもいらついて、自分で情緒不安定だと感じることもあります。どうしたらよいでしょうか。(越前市、62歳男性)

 【お答えします】

! 生活に支障あれば治療対象

 イライラしたり、気持ちが不安定になり、眠れないとのこと。さぞ辛いとお察しします。詳細な病歴の記載がないので、二つの状況を想定してみました。

 一つはベースに不眠があり、そのために気分が不安定になっているパターンです。前立腺の出術を受けたとのことですが、年齢を重ねると、手術などから不眠が慢性化する場合があります。

 日中の眠気やだるさなど日常生活に支障を来すほどの不眠は治療の対象になります。

! 薬や睡眠習慣の改善が有効

 治療方法は、薬物療法と睡眠習慣の改善が一般的です。薬物療法として今回の場合は、途中で目が覚める中途覚醒が主症状ですので、作用時間が中間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬がいいかと思われます。

 ただ、睡眠薬といっても魔法の薬ではないので、眠れる日とそうでない日があります。眠れない日もあまり神経質にならず、「数日すればまた眠れる」と気持ちにゆとりを持つことも大切です。

 睡眠薬と同じく有効なのが、睡眠習慣の改善です。例えば、寝る前のカフェインやアルコールの摂りすぎは眠りの質を悪くします。布団に入る直前までテレビを見たり、パソコンや携帯を触っていたりしていると、脳が覚醒して眠りにくくなります。

 毎日、決まった時間にリラックスして布団に入ることが、よい睡眠に効果的です。薬物療法や睡眠習慣に関しては一度専門医へのご相談をお勧めします。

!心の病気が原因の場合も

 もう一つは、イライラや気持ちの不安定さが原因で眠れない場合です。

 うつ病や適応障害では「気分が落ち込んで何もやる気が起きない」「今まで楽しくやれていたことに興味がわかない」などの症状のほか、食欲がなくなったり眠れなくなったりといった症状も出現します。ほかにもパニック障害や全般性不安障害といった不安が主症状の病気が原因で眠れなくなることもあります。こういった病気では、症状としてイライラ感や気持ちの不安定さも伴います。

 このような場合、いくら睡眠薬を飲んでも、原因となっている疾患の治療をしなければ不眠は改善しません。

 うつ病の場合は抗うつ薬が第1選択となり、症状に合わせて抗不安薬や睡眠薬を併用します。最近は50~60歳代にうつ病のピークがあります。手術などの過度のストレスを契機に発症することもあるので、こちらも一度専門医にご相談ください。

関連記事