白崎浩樹・県済生会病院内科医長

 【質問】20年ほど前から年1~2回吐血し、5年ほど前からは1カ月に2~3回に増えたので受診したところ、異常は見つかりませんでした。昨年の再診では、空気中の菌が気管に入り、傷口が破れて(血が)出ていると言われました。今年に入って呼吸が少し変で、吐血も多いときは1日に数回あり、気管の奥から出る感じがします。体の調子は悪くはないのですが、大きな病気ではないか心配です。(福井市、75歳女性)

 【回答】「吐血」とは、胃や食道から出血して口から血を吐くことを指し、気管支や肺からの出血は「血痰(けったん)・喀血(かっけつ)」と言います。痰に血が混じる程度の場合は「血痰」、喀出(かくしゅつ)されたものがほとんど血液の場合は「喀血」になります。相談の症状は、文面から「血痰・喀血」ではないかと考えられます。

 血痰・喀血の原因として頻度が高い病気には気管支拡張症、肺がん、肺結核、肺非結核性抗酸菌症などがあります。肺炎、肺化膿(かのう)症、肺真菌症、心不全、肺塞栓(そくせん)症などでも生じることがあります。また、歯槽膿漏(のうろう)からの出血や、のどの病気からの出血で、血痰とまぎらわしい場合もあります。

 診断のためには、胸部レントゲン、胸部CT、喀痰検査、気管支鏡検査などを行います。病気は、文面だけからは断定できませんが、20年も前から喀血・血痰が続いているという長い経過ですので、気管支拡張症や肺非結核性抗酸菌症が疑われます。

 気管支拡張症とは気管支が広がって元に戻らない病気で、生まれつき、小児期の肺炎、肺結核などの感染症のため気管支の壁が破壊されて起こります。症状は咳や痰で、時に血痰・喀血をきたします。痰が多い場合は去痰薬を内服します。

 肺非結核性抗酸菌症とは、結核菌の仲間の抗酸菌が肺に感染する病気の総称で、結核と異なり人から人には感染しません。主な症状は咳や痰で、時に血痰・喀血を生じます。この肺非結核性抗酸菌症のうち8割を占めるのは、抗酸菌の一種のMAC菌が原因となる肺MAC症で、中高年の女性に多く、年単位でゆっくり進行することが多い病気です。

 治療薬はあるものの、肺結核に比べると治療が効きにくく、期間が長くなったり、再発したりします。そのため、レントゲン上の陰影の悪化がなく症状が軽い場合は、治療に入らずに数カ月ごとにレントゲンで経過をみていくこともあります。

 いずれの病気でも、血痰・喀血に対しては止血薬の投与を行い、喀血が大量の場合や続く時には血管をふさぐ治療(気管支動脈塞栓術)や、場合によっては外科的手術を行います。

 血痰・喀血の頻度が増えているようですので、病気が進行している可能性もあります。経過をみていくだけでよいのか、治療に入る必要があるのか、現在の病状を確認して専門的に判断する必要があると考えられます。主治医に相談して、専門医を紹介してもらうことをお勧めします。

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