<福井の孫渡しとして贈られる天神様 1>

◆桃太郎ってだーあれ

 むかし、むかし、あるところに・・・で始まる私たち日本人なら知らない人はいないといってもよいほどになじみの深い昔話の「桃太郎」。

 その桃太郎とは一体だーれ? 一体どういう存在? そんなことを疑問に思うきっかけとなったのは「天神様」でした。

 「天神様」といえば、福井では男の子が生まれると、その誕生を祝して主としてお嫁さんの実家から正月前に「天神様」を贈るという風習が今なお伝えられてきているというのです。

 しかも、「天神様」を贈る風習というのは福井を始め北陸のほんの限られた地域だけだというのです。

 この天神様を贈る風習について改まって考えるようになったのは、孫の誕生にあたってでした。

 そういえば私の実家にも大きな木製の「天神様」があったことが、今、ふっと思い起こされてきました。毎年1月だったか2月だったかの正月頃になると伯母が蔵の箱の中にしまってあるものを出してきて座敷の床の間に飾っていたのです。

 その頃には、その人形が何なのか、どうしてそこに飾られるのかなんの疑問も湧かず、ただただ伯母がある時期になると飾っていたぐらいの記憶なのです。ですからその人形に対してはなじみもなく、むしろその人形が飾られると少し怖くて座敷には行きにくさをおぼえたほどでした。その人形の首や手がはめ込み式になっていたので、ときどきその首や手をはずして遊んだぐらいのものでした。

 今頃になってああそういえば我が家にも天神さんがあったのだと気づいた次第なのです。学生時代に亡くなったという従兄にあたる伯母の子どもの誕生を祝して実家から贈られた天神さまだったのでしょう。

 「天神様」といえばたいてい学問の神様として有名な菅原道真が主祭神として祀られております。

 その菅原道真にあやかって子どもが学問が(勉強の)よくできる子に育ってほしいという家族の心からの願いからか、天神様を贈るという習慣が今日でも伝統的慣習として一般的に行われているのです。

 実際に私が孫に贈る段階になってはじめて、「天神様を贈る」という習慣と真正面から向き合うことになり、真正面から向き合ってみると「天神様を贈る」ということに対していくつかの疑問が生じてきました。

 まず、学問の神様としての菅原道真にあやかるということで天神様を贈るのであれば、現代という時代を選んで生まれてきた子どもに贈る贈り物として「天神様」は本当にふさわしいものなのかどうかということ。

 その前に「天神様」とはどういう神様なのでしょう。天神様の主祭神は本当に原初から菅原道真だったのでしょうか。県外の人に福井での天神様を贈る習慣を話すとたいていの人はとても驚きます。

 なぜ福井を中心とした限られた地域においてのみこの風習は行われてきたのでしょうか。こうした雲をつかむような疑問が次々とわきあがってくるなかで、一方において、では今の時代を選んで生まれてきている子らに、その健やかな成長を願って贈るにふさわしいものとはいったいどういうものなのでしょう。