8月11日、夜。
福井県越前町熊谷。
民家の明かりとも、街の喧騒とも無縁の山間部。

暗闇と山々に覆われた田畑の中を、ダンスビートが突き抜ける。
ライトアップされた雑木林で、地元のコメ農家の青年、井上高宏さん(32歳)が、いつもは軽トラを運転する手で、ターンテーブルを巧みに操る。

井上さんのまわりには音楽に合わせ、それぞれのステップでダンスする人たち。
コンガなどの打楽器を打ち鳴らす人たち。
まさに文字通りの「どんちゃん騒ぎ」が そこでは行われていた。

Mount of musicの様子

旧宮崎村で専業米農家を営む、井上さんが主催したイベント「Mount of music」は、見慣れた夏の田舎の田園風景に、ある種、異様な空間を生み出していました。

なぜ、わざわざ山の中で音楽を!?
そう思った人も多いはずです。

実はこのイベント、単なる酔狂などではなく、井上さんをはじめ、多くの農家が抱える問題が深く関係しています。

それは「獣害」。

イノシシなどの獣に食い荒らされ、育てた作物を出荷することができなくなる。
売り上げに直結するそれは、農家にとって生活に関わる大問題なのです。

さかのぼること、今年の6月3日。
若い世代の人たちに、もっと農業を体験し、農業を知ってほしいと願う井上さんは、熊谷で、ある田植えイベントを行います。それは、DJを呼んで音楽をかけながら、ノリノリで稲を植えていくというものでした。

ゆるパブリックのメンバーであり、越前市在住の僕が、井上さんと初めて出会ったのは友人宅での飲み会。専業農家でお米をつくっている上に、ダンスも得意で、国際交流にも関わっていると知り「この人、めちゃくちゃオモロいなぁ」と、井上さんのいう人物に関心を持たずにはいられませんでした。それ以来、時折、井上さんとは会う機会があり、農業のこと、恋愛のことなどなど(笑)、いろんなことを語り合うまでの仲になりました。

関連記事