今年1月に亡くなった女性の骨を海にまく家族=7月25日、沖縄県恩納村から沖合2キロ

生前の女性が拾ったサンゴ(右)と、次女が拾ったサンゴ。両方とも遺影の前に供えられている

  ■骨は紙袋の中■

 散骨を扱う沖縄県の業者に連絡し、自宅に残してあった遺骨を段ボールに詰め郵送した。男性たちが沖縄に着いたときには、女性の骨はパウダー状になり、3つの小さな紙袋に納められていた。

 沖縄の旅は7月23日からの3泊4日。散骨した25日は恩納村の港から、沖合2キロに船を出した。3人とも紙袋を手に持ち、色鮮やかな沖縄の花と一緒に骨を海にまいた。感情の揺れはなかったという。業者は散骨した位置を緯度経度でデータ保存。散骨の料金は約13万円だった。

 散骨前後の日は、昨年旅行した先を回った。男性は「時々、妻が横にいるような感覚になった。トイレにでも行っているんじゃないかって」。小学生の次女は海に潜り、白いサンゴを拾った。

  ■思い出お供え■

 女性の思いを尊重し、墓は作らなかった。男性は「まわりからは『なんで墓に入れないのか』と言われ、散骨すべきか悩んだ」と振り返る。

 「だけど妻は最期まで自分の思いを貫き文章に残した。それにこたえてあげたかった」。通夜のときは、女性が大好きだったミュージシャンの音楽をかけた。これもノートに書かれていたこと。

 ただ男性は一つだけ約束を破った。骨の一部は、県外にある女性の実家の墓に入れてもらった。「妻は怒るかもしれないが、それじゃあ、あまりにも妻の両親がかわいそうだから」

 墓がないことの寂しさは3人ともないという。自宅にある遺影の前には、生前に女性が拾ったサンゴと、次女が拾ったサンゴ、それに女性が大好きだったオリオンビール、塩ちんすこうがお供えしてある。

 「次はいつ沖縄に行こうかと、そんな話をしている。ちょっと高くつくけど、墓参りの代わりの沖縄旅行も、いいんじゃないかな。墓がなくても妻を思い出すことはできるし、何より妻がそれを望んでいると思うから」

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