犬飼智雄 国立病院機構福井病院リハビリテーション科医長

 【質問】48歳の主婦です。昨夏ごろから突然、右肩が上がらなくなりました。特に夜は痛くて起きてしまうこともあります。普段あまり運動などはしていないため、ストレッチ運動などをするようにしても結局よくなりません。年齢的に五十肩と思いますが、どうしてこの年齢になるとこのような症状が出るのでしょうか? 痛みを軽減する方法や治療法などはあるのでしょうか?(坂井市、女性)

 【回答】いわゆる五十肩というのは、五十歳代に多く発症する肩関節の痛みと運動制限に対する俗称です。その病態は加齢による変性と考えられています。

 五十肩の語源は古く、江戸時代から使われていたようです。そのため、一般的に肩関節の痛み=五十肩として考えられる傾向があります。しかし、実際にはさまざまな病態が混在していることが多く、腱(けん)板断裂や肩峰下インピンジメント症候群、石灰性腱炎などの疾患ではないか診察する必要があると思われます。なぜなら病態により治療法が異なるからです。

 理学所見、X線、MRI、超音波等の画像検査、血液検査、関節造影検査などにより鑑別することができます。腱板の完全断裂の場合、断裂部位が自然に治ることはないと考えられています。

 さて、狭義の五十肩は凍結肩とも呼ばれ、凍結進行期、凍結期、解凍期の3つの時期を経て、1年くらいで自然に治ります。治療としては、まずなにより予防が大事で適当な肩の運動がお勧めです。古い革靴でも毎日履いていると硬くならないのと同じです。

 しかし、いったん発症した場合は、まず運動を制限して痛みを誘発しないように心がけましょう。夜間の肩関節の保温は特に大切です。また就寝時の上肢の位置も工夫をして、柔らかい枕を使用すると楽になる場合があります。痛みが強い時期には消炎鎮痛剤の内服、三角巾を使った上肢の安静、ヒアルロン酸や局所麻酔薬、ステロイドの関節内注射などを行います。

 関節内注射は癒着・閉塞した滑液包(かつえきほう)(関節の周囲にある関節の動きを滑らかにする役割を持つ袋)を拡張させるのに有効です。
 痛みが軽減しても、肩のこわばりや動きにくさが続く場合はリハビリテーションを積極的に行います。

 リハビリには重力を応用したCodman体操(別名アイロン体操)があります。前屈位の態勢で片手で重りを持ち、前腕を垂らし円を描くように回す体操で、症状に応じて重りの重さを0・5キロから3キロに調整する方法です。肩は多くの関節の複合体であり、肩甲骨を含めて複雑な動きをしているため、ご自分でストレッチ運動をしても改善しない場合には理学療法士によるリハビリテーションが有効です。

 狭義の五十肩は適切な時期に治療を行えば、自然に治る疾患ですが、腱板断裂などの鑑別は必要と思われますので、整形外科専門医を受診されることをお勧めします。

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