各季節の旬の酒のラベル

 

 

 8月頃から9月頃には「ひやおろし」が出荷される。「ひやおろし」とは漢字で書けば「冷や卸し」「冷や下ろし」とも書く、暑い夏を過ぎるまで低温貯蔵し、初秋に出荷する酒のことである。

 製造場面で説明すると、3月末頃までに搾った酒を、まだ生きている酵母菌を熱で殺菌する為、65度の熱に3分以上通過させて貯蔵タンクに貯める。外気と遮断し密閉して保存する。

 大半の酒蔵は明治、大正、昭和初期と旧家の酒蔵が多く、その蔵は現在でも造り蔵や貯蔵庫として使用している。蔵の土壁は50センチ以上の厚さがある、他に石造りの壁を見たことがある。それ等は断熱効果と保温効果に優れ、夏でも蔵の中は冷やりと肌寒く感じる。近年ではその様な古蔵や新設の造り蔵に、冷却設備を設置しマイナス10度位まで冷やせる蔵もある。

 8月半ばを過ぎる頃に、低温貯蔵された酒を瓶に詰める作業が始まる。その時に再度65度の熱処理がされる。2度目の加熱は殺菌効果と劣化防止の為である。その後2週間から1ヶ月程貯蔵され「ひやおろし」が完成する。

 造り手が飲み頃を見計らい手間暇かけた「ひやおろし」酒は、新酒の様な華やかな香りは、熱処理のために損なわれているが、約半年間熟成させたおかげで酸味や渋味、甘味、アルコール臭など様々な成分が中和され円熟な酒に仕上がり、日本酒が持つ本来の旨みが味わえる酒となり、正に飲み頃の「旬」の酒である。

 10月に入ると、更に熟成させ旨みが増した酒が「秋酒」「秋あがり」「燗酒」等とネーミングされ、晩秋の「月見」や「紅葉」を楽しむ「季節」の酒となる。

■笑いと福呼び込む「心の美水(みず)」


 「初しぼり」「新酒」「ひやおろし」「秋あがり」それぞれの製造過程に一番美味しい「旬」と「季節」があり、造り手と飲み手はその時の一番を楽しみ、幸せを感じあう。互いは見えないが、心の中で満面の笑みを描く。日本の飲酒文化に根ざした日本の心は日本酒の醍醐味として存在する。

 日本酒は酔うための手段でなく、楽しむ為に飲み、飲んで幸せと平和を感じ、酔えば笑いと福を呼び込む、心の美水(みず)なのです。

 現代社会では日本独自な社会的道徳や人間的感性などが薄らぐ中で、より多くの人々に日本酒を飲んでもらい、日本の心と感性を取り戻して頂きたい。

 次回は「旬」を最大限に活かした酒蔵、永平寺町松岡「田辺酒造」を紹介します。お楽しみに!