◆新しい誕生へ向けて志向する力

 

 さて、さらに本題に戻って『シュタイナーの死者の書』(ルドルフ・シュタイナー著 高橋巌訳 筑摩書房)によって話を進めて行きたいと思います。

 

¬¬¬¬¬¬――死から新しい誕生までの霊的生存の真夜中と名づけられた時期を過ぎると、今孤独のなかで、自分が引き離されてしまった外界へのあこがれが再び強まり霊界での私たちの中に新しい魂の光が生み出されるというのです。そして私たちは、特別な種類の外界を見ることができるようになるという。そのとき私たちが観る特別な種類の外界は、私たち自身の過去の世界で、これまでに繰り返されてきた輪廻転生の中で得てきた、地上界の体験と霊界の体験とから成り立っているというのですが、私たちは今、それをひとつの外界として展望するのだというのです。

 

 やがて周囲の霊的環境の薄闇の中から,ひとつの光景がはっきりと表れてきて、それは私たち自身の過去の諸生活の光景であると共に、その生活と密接に結びついた人間関係の光景でもあるというのです。生前の世界が今、私たちの外界になって、自分の内部でまだ決着のついていないすべての事柄を見るのだというのです。

 

 この時期には生前のすべての行為が死者の眼前に現れ、どんな人も、前世を回顧することができ、新しい地上の生活においては、前世でやれなかった事柄を償い、そうすることで、人生を良い方向に持っていこうとする思いを生じさせるというのです。

 

 前世では悪いことをしたが、次の地上世界ではその償いをしよう、という憧れが生ずるのだというのです。

 

 私たちには、自分が負担をかけた人たち、自分に負担をかけた人たちがいますが、この関係も魂の前に償いを求めて現れ、そして次の地上生活において、ふたたびその人たちと一緒に生きようとする傾向を生じさせます。それによって地上を志向する力が作られるというのです。

 

 例えば私たちが誰かにうそをついたとします。そうすると、その嘘に対応する真実がこの時点で、私たちを苦しめるようになるという。嘘をついた相手に対する私たちの関係が変化するのだという。 その人を眺めるたびに――そして私たちの霊眼はその人を眺め続けます。¬¬¬¬¬¬――その人は、私たちのついた嘘に対応する真実、私たちを苦しめるその真実が私たちの中に現れてくる原因となるというのです。そしてそれによって、私たちの魂の奥深くから、次のような衝動が生じます。霊界においては、嘘をついたことの結果を理解することだけしかできません。地上で行った事柄はふたたび地上においてしか決着をつけることができません。そのためには、ふたたび肉体を持つときにのみ可能となる力が、自分のなかに生じなければならないというのです。

 

 同じようなさまざまな力が死者たちの中で目覚め、そのようにして人びとは来世でお互いに再開し、前世における罪を互いに償い合おうとするというのです。前世を回顧することだけが大切なのではなく回顧することによって、新しい地上生活を償いのために生きようとする傾向が持てるようになることが大切なのだというのです。

 

 死から新しい誕生までの霊的生活を更にいろいろと体験していくにつれ、新しくまた地上に生まれてこようとする傾向がますますはっきりと表れます。その傾向が強まるに従い、死者たちはそれまで体験してきたことから、新しい地上生活の霊的・エーテル的な原像を作り上げるというのです。新しい地上的生活に入るために、父親と母親から受ける物質成分に自分を結びつけるのだというのです。遺伝的な特徴とこの原像との間に霊的な磁力とでもいうべき親和力が見出せるような両親に引きつけられます。そのようにして死者たちは再びこの地上で、肉体を担った存在として生きるのだというのです。

 

 この世に生まれると、子どもたちは次第に内部から豊かな表情を著し、不器用な動きを器用な動きに変え、身体を育てていきます。そのように子どもの成長は、非常に神秘的な仕方で行われます。なぜ生まれてからの数年間は思い出す力が存在しないのかをも理解します。つまり、記憶力となりうる力が体の組織化のために用いられているのです。子どもはすべての過去を思い出す力を持っているのですが、その力ははじめは変化させられており、記憶力がはじめは有機的な成長に変わっているのです。後に記憶力となりうる力が身体組織を作り上げるのです。それは変化した魂の力です。

 

 このように私たちは、生まれる以前の生活を理解することによって、今のこの人生をも理解します。――と書かれているのです。

 

 さらに、われわれの地上の人生体験は、われわれ自身が生まれる以前に、前世の清算をするために(バランスをとるために)、新しい人生において必要な体験として、不幸になろうとする衝動を自分の魂に植えこんだものだというのです。霊界での私たちは、全く違った観点に立っていて、物質的な地上世界の観点だけから見ると、当然嘆くことになるような人生を自分で用意するのだというのです。美食家の例えで「執着の本質」や「不幸や病気の意味」や「犯罪」や「自殺」や「夭折(若くして亡くなる)の意味」、さらには今日の市場の生産の在りようを「社会の癌」として捉えて触れていますが、ここでは「死後から誕生まで」のその概要をご紹介するにとどめておきたいと思います。関心のある方や、もっと深く、確実に知りたいと思われる方は参考文献を下記にあげておきましたので、参照いただき、さらに是非ご自分でお読みになっていただけたらと思います。

 

【参考文献】
『シュタイナーの死者の書』(ルドルフ・シュタイナー著 高橋巌訳 ちくま学芸文庫)
『神秘学概論』(ルドルフ・シュタイナー著 高橋巌訳 筑摩書房)
『神智学』ルドルフ・シュタイナー著 高橋巌訳 筑摩書房
『死ぬこと 生きること』(小林直生著 涼風書林 元司祭の立場から「死について「人間の歩む死後の道」についてとても簡潔にわかりやすく書かれている冊子です)
『シュタイナー 健康と食事』ルドルフ・シュタイナー著 西川隆範訳 イザラ書房
『シュタイナー 病気と治療』ルドルフ・シュタイナー著 西川隆範訳 イザラ書房