新入社員に仏教や社会人の心得を教える柴田文啓住職(右)=3月、長野県千曲市の開眼寺

 「有名大学を出て市役所に勤めているが、辞めたい」「しゅうとめとうまくいかない」。寺には悩みや心身の病を抱えた老若男女がやって来る。柴田住職は「ひたすら話を聞き、相手の目線に立つ。助言を求められて初めて『お釈迦様はこんなことを言っていますよ』と声を掛ける。1対1の場では聞く姿勢が求められる」。

 宗派では宗門活性化推進局顧問を務め、空き寺対策の一環として、シニア世代の僧侶への“リクルート”を推進。これまで約60人の社会人が得度し、10人が寺の住職になったという。「人の悩みに思いをはせ助言するには、それなりの社会経験が必要」。自らの人生に基づく信念だ。

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 大手企業の粉飾決算など、相次ぐ近年の企業犯罪について柴田住職は、現在の企業のトップは団塊の世代が多いことを指摘し「家族を顧みず、高度経済成長期を生き抜いてきた世代。彼らには人の道を指し示す宗教は存在しなかったのではないか」と憂う。データ改ざん問題にも触れ「実験データはいわば“神の声”。それをごまかすとは信じられない」と元技術屋の顔をのぞかせる。

 猛烈なスピードで変化する現代に通じる「諸行無常」、全てのものはつながりの中で存在しているという「諸法無我」…。1997年に65歳で在家得度した稲盛和夫氏(京セラ名誉会長)は、8600億円超の債務超過に陥った日本航空を再建に導いた。稲盛氏の経営12カ条には「商いには相手がある。相手を含めて、ハッピーであること。皆が喜ぶこと」と、利他という仏教に通じる教えもある。柴田住職は「仏教は企業経営にも大いに参考になるはず」と話す。

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