石島健 福井赤十字病院 耳鼻咽喉科部長

 【質問】 2週間前から、のどに詰まったような違和感があります。食事をしたときには特に感じます。不安に感じ耳鼻咽喉(いんこう)科の病院でレントゲン、内視鏡で調べ、特に異常はありませんでした。「咽喉頭異常感症」かもしれないといわれましたが、この症状は別の病気につながることはないのでしょうか?
(越前市、30歳女性)

 【回答】 のどの不快感があるにもかかわらず、咽頭・喉頭に病理的・解剖的な異常を認めない状態を、「咽喉頭異常感症」と呼びます。
 この病気は別の病気につながるようなものではなく、精神的な要素が強い疾患と考えられてきました。ところが最近、胃酸の逆流がのどに与える影響についての理解が進んできました。その結果、従来は咽喉頭異常感症と診断されてきた方の中に、かなりの割合で胃酸逆流が原因となっている場合が存在することがわかってきました。
 以前から逆流性食道炎という病気は広く知られています。これは通常、食道下部括約筋の機能不全により酸性の胃内容物・胃液が、胃と食道をつなぐ噴門を超えて食道側に逆流するために生じる食道の炎症で、げっぷ・胸焼けなどの症状を起こします。
 この酸性の胃内容物・胃液の逆流が、食道にとどまらずのどにまで及んだ状態を「咽喉頭酸逆流症」といい、のどの違和感・咽頭痛などの症状が出現します。
 注意しなければいけないのは、咽喉頭酸逆流症の患者さんのすべてが胸焼けやげっぷという逆流性食道炎の症状を持っているとは限らないことです。しかしながら、のどにまで酸の逆流があるということは、必ず食道にも逆流しているわけですから、矛盾しているように聞こえます。この原因は、食道の方がのどよりも酸に強いからだと考えられています。食道は胃に隣接している臓器ですから、多少の胃内容物・胃液といった酸性物質が逆流してくるのは、人体の中では想定内のことであるのに対し、のどの粘膜にとっては、酸にさらされることは全く想定外な事態であるため、少量の酸にさらされるだけでも障害がおきると考えられています。
 咽喉頭酸逆流症の患者さんののどの所見には、明らかな病変が認められないことが多いため、病歴が重要です。胃酸分泌を活発にするといわれている甘いものや脂っこいものが好きな方、就寝前に食事をする習慣を持つ方、よくお酒を飲む方、糖尿病の方、腰が曲がっている方などに胃液逆流が起こりやすいといわれています。上半身を少し持ち上げて寝ることや、胃酸を抑える薬をしばらく服用することで、のどの違和感が軽減することがありますので一度、耳鼻咽喉科専門医を受診して相談してみてください。

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