棚瀬和弥 福井大医学部泌尿器科助教

 【質問】 2カ月前、2人目(長女)を出産しましたが、尿漏れで悩んでいます。寝ているときなどはありませんが、くしゃみや歩いているときに起きるようになりました。もともと、少量の尿漏れは独身の時からありましたが、それほど量や頻度は多くなく気になるほどでありませんでした。しかし今回は量も頻度も一気に多くなり外出が怖くなりました。このまま放置した場合、悪化するのか、また治療をするとしたらどのような治療をするのか教えてください。(敦賀市、39歳女性)
 
 【回答】 女性の尿失禁は大まかに、咳や重いものを持った時などおなかに力が加わった時に尿が漏れる「腹圧性尿失禁」、トイレが間に合わずに尿が漏れる「切迫性尿失禁」、両者を合併した「混合性尿失禁」に分けられます。
 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁は原因が異なり、治療法も違います。相談者の場合は腹圧性尿失禁と推測されます。
 腹圧性尿失禁は、出産、加齢、肥満、便秘などにより骨盤の底部を支えている筋肉や靭帯(じんたい)が緩み、尿道を締める機能が低下するために起こります。その治療として運動療法、薬物療法、手術療法があります。
 運動療法は骨盤底部の筋肉を鍛えて緩みを改善させる方法で、「骨盤底筋体操」という運動を毎日10~15分行えば約半年で50~80%が改善するとされています。間違った方法だと失禁が悪化するため、正しい指導を受ける必要があります。
 薬物療法は3環系抗鬱(うつ)剤やβ刺激剤という薬を用いて尿道を締め、失禁を改善させます。運動療法と組み合わせれば内服中止も可能になります。
 手術療法は主に尿道スリング手術が行われます。膣内から尿道の下方に人工のテープを挿入し、尿道を支持して失禁を改善させます。通常はTVT手術(尿道をテープで支持し、両端をおなかに出す)が行われますが、福井大では合併症の少ないTOT手術(尿道をテープで支持し、両端を内股に出す)を導入しています。手術時間は約10~30分、4~5日で退院可能です。合併症も少なく、90%以上で失禁は軽快し、術後の満足度は良好です。
 相談者の場合、年齢が若いことから骨盤底筋体操により軽快が見込めますが、放置すると次の出産や加齢により失禁が悪化する可能性があります。外出に影響するようなら、一度泌尿器科医の診察をお勧めします。
 中高年女性の約40%が腹圧性尿失禁を有しており、多くの女性が悩んでいます。治療により快適な生活が送れますので、恥ずかしがらずに泌尿器科を受診してください。
 福井大泌尿器科では女性泌尿器科外来を設けており、初診患者は女性泌尿器科医、女性スタッフによる診療を行っております。完全予約制=☎0776(61)3111。

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