夏井耕之・福井赤十字病院内科部長

 【質問】57歳の妻が2007年春に脂質異常(LDLコレステロール161、HDLコレステロール63、総コレステロール247、中性脂肪143)と指摘されました。一般的に食生活改善や運動で、やせることを勧められますが、特に高カロリーの食事をしてきたわけでもなく、妻は身長159センチ、体重37・5キロとすでにやせているためどう対処してよいか分かりません。薬も服用していましたが、肝機能異常により昨春より中止しています。(敦賀市、59歳男性)

 【回答】肥満でもない、日常的にひどく高カロリーでもない、薬も副作用が出たということで迷っていらっしゃると思います。ただ質問の内容を整理しますと、ご注意されるべき点もあるように思います。
 高脂血症の原因は遺伝的、あるいは不明の「原発性高脂血症」と、薬剤やほかの疾患に由来する「二次性高脂血症」とに分けられます。前者の多くは若年から重症化することが多く、それらは考えにくいですね。
 状況を整理いたしましょう。今回の状況は▽中年期女性▽高脂血症は悪玉コレステロールが高く中性脂肪は正常範囲▽やせすぎ(体格指数BMIで14・8)ということですね。
 可能性としては、遺伝的要素で発症するもののうち「特発性」など重症でないもの。治療は通常の薬物療法です。
 第二として考えられるのは閉経後の高脂血症です。これは一定の遺伝的体質をもたれたご婦人が閉経期を迎え、急激に女性ホルモンが下がることで起こるもので、一種の更年期障害といえるでしょう。この可能性があれば産婦人科などで相談されまして、HRT(ホルモン療法)を行ってみる道があるでしょう。
 さて、最も心配なのは、非常にやせておられることと高脂血症とが関連している、なにか疾患が隠れていることです。すなわち「二次性高脂血症」である場合です。
 その原因としてはやせそのもの。一般に栄養状態が悪いと甲状腺ホルモンの機能が低下し、体を「省エネ運転」にする結果、代謝が落ちてコレステロールがたまります。そのほか▽重大な肝疾患(肝硬変や肝がん、そのほか胆管が閉塞(へいそく)し黄疸(おうだん)がでるような疾患)▽重大な腎疾患(ネフローゼ症候群や慢性腎不全)▽膠原(こうげん)病あるいは多発性骨髄腫のような血液疾患▽成長ホルモンや副腎皮質ホルモンの異常▽一部の治療薬(ステロイド・利尿剤や血圧の薬の一部、免疫抑制剤やてんかんの薬の一部など)▽喫煙や大酒-などがあります。
 特に成長ホルモンや副腎皮質ホルモンの異常以外は、やせを伴うことも多くあります。いろいろな可能性を考えて、一度きちんとした検査を受け直されることをおすすめします。
 また、治療としては、疾患がない場合には逆に必要なカロリーをしっかりとって生き生きと動く、ということもよいでしょうし、先に述べた女性ホルモン治療のほかにも、使えなかった薬とは別系統の薬もいろいろとございます。よく主治医先生とご相談ください。
(夏井耕之・福井赤十字病院内科部長)

関連記事