斎藤武久福井大医学部耳鼻咽喉科助教授

 【質問】耳鳴りに6年ほど前から悩まされています。夜がひどく、波打つようになります。病院でCT、MRIなどの検査をしましたが、耳に異常はなく耳鼻科でビタミンB12、心療内科で精神安定剤、睡眠薬を処方されました。ただ現在、薬を飲んでも3時間ほど眠れるだけで昼は体がつらいです。もう少し楽になる方法、治療法がありましたら教えてください。(鯖江市、72歳女性)

 【回答】耳鳴りは自分にしか聞こえない音のため、他人にその苦痛を理解してもらうことができず、一人で深刻に悩んでしまうことがあります。
 病院での検査では耳や脳に病気はないのに睡眠が妨げられるほど耳鳴りが気になり、薬の効果も芳しくないという質問内容です。
 人間は20歳を過ぎると内耳の感覚細胞が少しずつ死滅し始めると言われています。それとともに音の情報を脳へ伝える神経にも障害が生じ、その神経が異常な信号を出すために耳鳴りとして自覚すると考えられています。そして、60歳以上の実に3割以上の人が耳鳴りを自覚しているという報告もあります。
 世の中には耳鳴りに効果があるという薬剤や民間療法などが数多くありますが、万人に効く治療法は残念ながらありません。また、どんな治療法も耳鳴りを完全に消し去ることはできないのです。
 さて普段、身の回りではいろいろな音(環境雑音)が聞こえているのですが、気にならないことが多いと思います。しかし、ある音を不快に感じ始めるとイライラし、その音を消そうとしたり、音から遠ざかろうとします。そこで、自分では消せない耳鳴りを雑音の一つとしてとらえ、うまく付き合っていく(慣れる)工夫を考えてみましょう。
 まず、日中は仕事や趣味に打ち込んだり、なるべく出掛けるようにすることが重要です。つまり、耳鳴りを意識から遠ざけるようにするのです。自宅など静かな場所なら、ラジオや音楽を流しておくことをお勧めします。耳鳴りは雑音によって抑えられるという特徴があります。夜間、耳鳴りが気になって眠れない場合は、小さな音量でラジオを聞きながら眠りにつく。タイマー付きのラジオが良いでしょう。必要なら精神安定剤や睡眠薬の助けを借りて睡眠時間を確保することも重要です。睡眠が妨げられると体調だけでなく精神的にも不安定になり、さらに耳鳴りを気にしてしまうという悪循環に陥ってしまうからです。
 耳鳴りの治療として、各種薬物療法のほか音響療法、心理療法、カウンセリングなどがありますが、紙面の関係で詳しく説明できません。自分に合う治療法を見つけたいと思われるなら、耳鼻咽喉(じびいんこう)科専門医にぜひご相談ください。

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