これは理想論でしょうか? 試してみる価値はあると思いませんか? ちょっと私たちの考え方を変えるだけで実行可能です。毎日毎食を家族全員で食べるのは難しいでしょう。でも出来る限り一緒に食べる時間を設定し、純粋に楽しんで食べてみると、きっとその機会をもっと増やしたくなるはずです。美味しい食べ物の恵みに感謝し、愛する家族がいることに感謝する気持ちも、頭の知識としてではなく、心の中からふつふつと沸いてくる気がします。

子どもの育ちについての学んだソフィアズハース・ファミリーセンターでのトレーニングの中で、離乳食を食べさせてもらうという体験学習をしました。生徒二人で組んで、一人が赤ちゃん役をして食べさせてもらうのです。赤ちゃん役は、言葉を使うことを禁じられます。簡単な実験でしたが、実にたくさんの気づきを得ることが出来ました。介護でも食べることは人間の尊厳に関わることとして重要な要素だと聞きます。まさにそのことを体験しました。

用意された数品のメニューのなかで、まず何が食べたいか、次は同じものをもう一口欲しいか、今度は別のものを食べたいか。まださっきの一口を噛み終わってないのにもう次の一口を入れられた、ちょっと待ってほしい。もう食べたくないのに「あーん、あーん」て押し付けないで--言葉で伝えられない、自分でコントロールできないもどかしさ。食べることがいかに人間として大事な行為であるか思い知ると同時に、赤ちゃんが口がきけないながらも態度や表情で表している微妙なメッセージを受け止めようという意志と注意力が自分には欠けていたことを感じました。

今さら離乳食のやり直しは出来ませんが、何歳であっても、遅すぎるということはありません。食べるのは子ども本人であり、大人の仕事は食べさせることではなく、食べ物を用意して、一緒に楽しく食べること。あとは子どもの成長を信じるのみと意識すると、まずはふっと力が抜けるのではないでしょうか。

以上、エレン=サターの提唱する責任分担をご紹介しました。各家庭の事情は様々ですが、少しでもお役に立つ材料を見つけていただければ幸いです。

子育てにおいて、方針を変えたり、新しいやり方を導入するときに重要なのは小手先や口先の術ではなく、大人の明確な意思と誠意です。年齢が大きいほど当初の戸惑いや反発も大きいかもしれませんが、やがて必ず落ち着き、いい変化が見られることでしょう。

【脚注】

※1.エレン・サター・アソシエイツホームページ

※2.Satter,Ellyn.Secrets of Feeding a Healthy Family.Kelcy Press.2008;267.

※3.Davis CM.Self selection of diet by newly weaned infants:an experimental study.Am J Dis Child.1928;36:651-679.

※4.子どもは自分の発達に最適な動きを自発的行動(遊び)の中で繰り返し学習し、座る、立つ、歩くなどの身体的能力を獲得していく。大人がお座りや歩く練習をさせることは助けにならないばかりか長い目で見たら害になることが多い。2010年12月のコラム