天谷信二郎県済生会病院整形外科主任部長

 【質問】昨年末の大掃除の際、机を不自然な姿勢で動かそうとしたところ、背中の肉離れを起こしました。右背筋部が腫れて痛みがありましたが、1日程度で痛みもなくなりました。半年ほど前にも、車から荷物を不自然な姿勢で取ろうとしたところ同じような症状になり、肉離れがくせになってきているような気がします。なぜ肉離れが起きるのか、予防法や背筋の鍛え方、対処法などを教えてください。 (福井市、40歳男性)

 【回答】「肉離れ」とは、主に下肢においてスポーツ中にしばしば起こる急性の筋損傷であり、選手が「急に筋肉が切れたように感じる」という経験に基づく呼び名です。打撲などの筋挫傷とは異なり、筋自らの筋収縮力、あるいは筋が反対方向へ伸ばされることにより発症します。

 その病態は不明な点が多いですが、近年のMRIによる研究から、筋自体の断裂ではなく筋肉と腱(けん)の移行部での損傷とされています。

 症状は、損傷部位の腫れ、しこりや断裂した部位のくぼみ、筋収縮による痛み、筋収縮に抵抗を加えることによる痛みが強くなる―などが挙げられます。

 治療は安静、冷却、圧迫、および四肢では患部を高くすることの徹底です。さらには消炎鎮痛剤が有効です。原因は筋の柔軟性の不足が大きな要因とされ、予防のためには、ストレッチ体操、筋の柔軟性の保持が肝要です。

 さて、ご質問の不自然な姿勢での作業中に発症した肉離れによる背部痛ですが、これはいわゆる「ぎっくり腰」とよばれる急性腰痛と同様の状態と思われます。

 「ぎっくり腰」には椎間板(ついかんばん)性疼(とう)痛、椎間関節性疼痛、仙腸関節性疼痛、後方靭帯(じんたい)(棘(きょく)上靭帯・棘間靭帯など)の障害、筋・筋膜性疼痛などが含まれます。

 「肉離れ」がぎっくり腰や背部痛の原因になることがあり、この場合「筋・筋膜性疼痛」と呼ぶことがあります。急性の筋・筋膜性腰背部痛の代表的なものは、重いものを持ったり体をねじったりした時に生じるもので、特定の姿勢で特定の筋に負荷が加わって引き起こされます。過度の負荷により筋内圧が上昇し筋が硬くなり、筋肉内にさまざまな化学物質が生産され痛みが増します。

 このような状態が繰り返されることにより、背筋の脊椎(せきつい)骨への付着部での腱膜炎、腱炎、骨膜炎を生じ、さらに大きなストレスにより断裂を起こしたりはがれたりして痛みが再発すると考えられます。

 相談者は同じような痛みを繰り返しておられます。原因として肥満、体の整備不足、運動不足による腰背筋の弾力性の低下が推測されます。ふだんからのストレッチ体操、柔軟体操を含むさまざまなスポーツや筋肉トレーニングをお勧めします。

 腰背部痛の原因として、まれながらすい臓をはじめとする内臓疾患や脊椎疾患がありますので、念のため病院での精密検査を検討してください。