「気象庁などが出す情報を理解し、活用してほしい」と話す気象庁の鎌谷紀子地震津波監視課長=6月16日、気象庁

紫色で示された新潟―神戸ひずみ集中帯(鷺谷威教授提供)

 1948年6月の福井地震から6月28日で74年となった。気象庁で地震、津波の情報発信の最前線に立つ鎌谷紀子・地震津波監視課長(55)=福井県越前市出身=は「福井県は大きな地震が起こるポテンシャルが高い領域に含まれている」と指摘し、日頃からの備えが大切と呼びかける。

福井地震はマグニチュード7・1で死者3700人以上、全壊家屋約3万6千戸など甚大な被害が出た。

 「当時の震度は体感や周囲の被害の状況から推定していて、階級が6までしかなかった。福井地震は一番強い震度6。あまりに揺れが強く被害も甚大だったので、福井地震を踏まえて翌年新たに震度7が追加された。気象庁にとっても非常に印象深い、キーになる地震。震度7の初適用は兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)で、それまではなく、やはり福井地震は大きな地震だった」

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今後、福井で大地震が起きる可能性は。

 「現在の科学的知見からは地震の確度の高い予測は難しいと考えられており、日頃から備えておくことが大切。エリアで見た場合、新潟から神戸にかけて、ひずみの蓄積速度が速いと言われている帯状の領域『新潟―神戸ひずみ集中帯』がある。集中帯は両側(東西)からギューっと押されて地殻がひずんでいるが、福井県の大部分がこの領域に入っている。過去に新潟地震(64年)、兵庫県南部地震(95年)、新潟県中越地震(2004年)など大きな地震が度々発生し、福井地震もその一つ」

 「福井県は、福井平野東縁(とうえん)断層帯や柳ケ瀬(やながせ)・関ケ原断層帯、嶺南の野坂・集福寺断層帯、三方・花折(はなおれ)断層帯など主要な活断層も多い。また、遠くで起きた地震が福井に被害をもたらした例もある。1944年の東南海地震、いわゆる南海トラフの地震では、福井県内でも家屋に被害が生じた」 

福井に津波が到来する可能性は。

 「日本海東縁部で発生した1983年の日本海中部地震(秋田県の沖合)では、福井港の検潮所で高さ69センチの津波が観測された。遠くの地震でも福井に被害が生じうる。福井の方々にはやはり『油断は禁物』と伝えたい」

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地震や津波に備えるために心がけることは。

 「例えば、備蓄や非常持ち出し品の準備、室内の物が落ちたり倒れたりしないようにしておくことは大事。特に重要なのが寝室。寝ているととっさに動けない。家具の固定など安全確保を。家族で話し合って、地震発生時の連絡方法や集合場所を決めておくことも重要。気象庁は、大きな地震が発生したときに緊急地震速報や津波警報などを発表するので、これらの情報の利点や限界を理解し、活用してほしい」

福井地震の体験者の話を聞いたことは。

 「母が震源近くの坂井市春江町出身で、祖母と母から話をよく聞いた。祖母は当時30歳ぐらいで、開口一番『あぁ、おとろしかったぁ(恐ろしかった)』って。赤ちゃん(母の弟)が布団で寝ていたら天井が落ちてきたが、絹織物工場を営んでいたので、赤ちゃんの両脇に積まれていた反物が支えになって奇跡的に助かったと。周りの家屋もほとんど倒壊し、夜中、建物の下敷きになった人のうめき声が聞こえてたとも話していた。母からは、近所の至る所から水が噴き出し、びしょびしょになったと聞いた。今でいう液状化。強い揺れのときは、砂が噴水のように吹き出る噴砂という現象も起こりうる」

 「高校のときの先生は、あぜ道を歩いていたら、田んぼが波打ってくるのが見えたと話していた。専門用語でいう表面波(地面を伝わってくる波)が見えていたのだと思う」

 ◇新潟―神戸ひずみ集中帯 新潟から神戸に延びる地殻の変形(ひずみ)が特に大きい領域。領域の境界線は明確になっていないが、東西から押す圧力によって、幅が年間1~2センチずつ縮まっているという。国土地理院の鷺谷威氏(現名古屋大学減災連携研究センター教授)らが、全国に設置されたGPS(衛星利用測位システム)を用いた研究で2000年に提唱した。
 ◇鎌谷紀子さん(かまや・のりこ)1967年生まれ。武生高校卒、東北大学大学院博士後期課程修了、博士(理学)。94年に気象庁に入り、東京大学地震研究所准教授などを経て、2022年4月から現職。6月19日に石川県珠洲市で震度6弱を観測した地震後も緊急会見した。専門は地震活動論や防災情報学。