国際政治学者・三浦瑠麗氏

 ―ロシアのウクライナ侵攻は、東部ドンバス地域と南部一帯を支配下に置くことが目的かとみられましたが、当初、首都キーウへも侵攻しました。プーチン大統領の戦略は。

 「電撃戦によるキーウ包囲戦は完全なる失敗に終わった。なぜ電撃戦をやろうとしたのか。支配の速やかな既成事実化を図り、その後、隠れみの的に不完全な国民投票を行い、かいらい政権の正当性を高めようと考えたのでしょう。情勢認識がかなり甘く、ウクライナの愛国心や国の一体性について目測を誤った」

 ―今後の行方は。

 「ロシアは東部地域で正規戦に切り替えるという見通しが強い。つまり予備役を動員して兵士の数を増やし、より長期的な構えで東部に進駐する。ウクライナは今、ゼレンスキー大統領と他の政府幹部が発するメッセージに齟齬がある。大統領は外交努力でクリミアを取り返すとしているが、軍や外交官からは武力奪還の考えが表明されている。軍がクリミアの手前で引き返さず、進軍する可能性がある。ロシアにとってはウクライナが攻めてきたことになり、総動員して戦争するに値する攻撃だとなる」

 ―プーチン大統領がウクライナ侵攻を決断した背景には、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大があったのでしょうか。

 「プーチン大統領にとってウクライナはあくまでも緩衝地帯であり、自分たちと対等な主権はないという考え方。緩衝地帯がなくなることはロシアにとって脅威。その脅威が軍事的なのか経済的なのか、文化的あるいは政治制度的なものかというと、全部だと思う」

 ―結果として、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟申請するという逆の方向に動いています。

 「両国は冷戦期、中立的な緩衝地帯とされていたけれど、実際には西側と連携を深めてきた。ロシアからすると脅威は若干増すと捉えるだろうが、実質はあまり変わらない」