「うつ病は誰でもなる可能性がある。早期発見・治療が大事」と話す福井県立病院こころの医療センターの村田哲人センター長=福井県福井市の同病院

 俳優の渡辺裕之さん、人気お笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」メンバーの上島竜兵さん。芸能界の第一線で活躍していた著名人の急死が相次いだ。ともに60代の働き盛りだった。メンタル面の要因も指摘される中、福井県内の精神科医は「喪失体験が多くなることや、病気や将来への不安などから、うつ病になりやすい年齢」と話す。家族ら周囲が兆候を見逃さず、早期発見・治療につなげることや社会的孤立を防ぐための支援が必要だ。

加齢により高まる発症リスク

 精神科医で福井県立病院こころの医療センター(福井市)の村田哲人センター長(61)は「個人ではどうしようもないことを、自分の個人的な問題ととらえてしまう人もいる」と語る。配偶者ら身近な人を失った、肩書や社会での役割をなくした、健康でなくなった…。高齢者は年齢を重ねるにつれ喪失体験が多くなり、うつ病の発症リスクが高まる。

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 また、周囲からは順調そうでうらやまれる状況でも、ピーク時と比較して自己評価を低くしてしまう人、大きな成功をしていても「この成功はいつまでも続かない」という不安を抱いたり「(成功を続けるために)さらに5年、10年も頑張らないといけないのか」と悲観的に考えたりしてしまう人も多いという。村田センター長は「これまで懸命に頑張ってきた人が、そういった心理状態になりやすいのではないか」と指摘する。

老年期のうつと認知症、見極め方は

 老年期のうつ病は、一過性に認知機能が低下して認知症のような症状を示し、気付いたときには進行していることも。どう見極めればいいのか。村田センター長によると、認知症は▽発症時期が不明確▽症状に無関心で自覚が乏しい▽返答するが内容がずれる―など、老年期うつ病は▽発症時期がある程度特定できる▽症状に過敏で、自覚している▽分からない、理解できないと返答する―など、特徴に違いがある。

 「うつ病は誰でもなる可能性がある。早期発見・治療が大事」と、村田センター長は不安や悩みがある場合は専門機関への相談や受診を呼び掛ける。家族ら周囲の人は、兆候を見逃さないことや、励ましや説教ではなく寄り添って共感することが求められる。

 新型コロナウイルス禍では感染対策で密を避けることが求められ、地域社会で活動したり、デイサービスや訪問看護を受けたりする機会が減った。身体的距離は保ちながら、心理社会的にはつながっているという意識を持つことが大切とし、「社会的孤立をしないような支援や仕組みをつくっていかないといけない」と訴えていた。