これまでの繁殖相手とは別の雌(右)を巣塔に迎え入れたコウノトリ「イチローくん」の父鳥=3月27日、兵庫県豊岡市(「コウノトリ市民科学」提供)

 コウノトリ、一途さに異変?―。繁殖ペアになったら死別するまで添い遂げるとされてきた国の特別天然記念物コウノトリのペア解消が、兵庫県豊岡市で初めて確認された。別れたのは、福井県越前市坂口地区で今年4月に2年連続となるひなを誕生させた雄「イチローくん」の両親。雄と早速結ばれた新たな雌に対し、別れた雌が攻撃を浴びせる様子も見られ、関係者は行く末を案じている。

 日本コウノトリの会(兵庫県豊岡市)によると、ペアを解消したのは、1970年に福井県越前市白山・坂口地区に飛来し保護された「コウちゃん」の孫で個体番号JO399の17歳雌と、個体番号JO011の14歳雄。2012年からペアとなり、豊岡市の巣塔で繁殖を重ねてきた。

⇒【写真】新“妻”を攻撃するイチローくんの母鳥

 異変が明らかになったのは今年3月。17歳雌が巣塔から姿を消し、雄はより若い12歳の雌を新たな相手として迎え入れていた。「これまでに存命のペアが離婚した例はなかった」(同会)ため、死別が原因かとみられたが、間もなく17歳雌の健在が豊岡市内で確認された。

 その後、古巣を奪還しようとするかのように、17歳雌が巣塔にいる12歳雌を襲う場面が目撃された。攻撃を受けながらも、新たなペアはその巣塔で繁殖行動に至って産卵、今月にひなを誕生させた。

 越前市エコビレッジ交流センター主任の野村みゆきさんは、坂口地区でわが子のように見守ってきたイチローくんの両親のペア解消を知り、「コウノトリの夫婦は一生を添い遂げると思っていたのに…」と複雑な様子。約50年前にくちばしが折れた状態で保護されたコウちゃんの孫のことを「遺伝子をさらに残すためにも、早く新しい彼をみつけてほしい」と思いやった。

⇒【動画】福井で子育て中のイチローくんペアとひな

 福井県内のコウノトリ愛好家からは「以前より個体数が増えて相手に目移りするようになったのかも」と推察する声も。日本コウノトリの会事務局は「これからは思い込みを捨てて、コウノトリのさまざまな行動を忠実に受け止めた上で、自然環境の保全につなげていく必要がある」としている。