職員玄関前の校歌碑を見る丹生高の生徒と牧野校長=福井県越前町の同校

 新型コロナウイルス禍の影響で、福井県内の各学校で校歌を歌う機会が大幅に減っている。特に音楽が必修ではない高校の教員や生徒から「メロディーを覚えないまま卒業してしまうのでは」と心配する声が聞かれ、伝統を受け継ごうと校歌の価値を改めて見直す学校も出始めた。

 「高校の校歌は歌詞も音程も、かなりうろ覚えです。小中学校の校歌は完璧に歌えるのに」。丹生高校3年で生徒会長の女子生徒が入学した2020年4月は、新型コロナ感染拡大に伴う一斉休校の真っただ中。授業再開後も始業式や全校集会が中止となり、「集会で校歌を歌った回数はこの2年間で数回ほど」(音楽教諭)。年間10回は歌っていたコロナ禍前に比べ激減した。

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 勝山高校も同様で、音楽を10年以上担当する講師は「生徒が校歌を元気に歌う校風が自慢だった。覚えていない生徒が目立つ現状は寂しい」と話す。選択制の音楽の授業では教材として校歌を積極的に扱うが、履修する生徒は全体の3割ほど。音楽を選択していない生徒たちに対しても「歌う機会を増やせないものだろうか」と気をもむ。

 丹生高は本年度、「校歌をしっかり歌う」を学校目標の一つに掲げた。牧野保彦校長は「学校や地域の誇りを刻む校歌を大切にし、人前で堂々と歌うことは、生徒たちを成長に導く」と力を込める。

 同校の校歌は1948年の開校時に作られ、「見よ 青春の血にもゆる 若人の希望に輝く丹生高校」と歌う。今年3月、21世紀枠で初出場した選抜高校野球大会で音源が甲子園に響き渡った。スタンドにいた牧野校長はこの時、生徒と一緒に校歌を見つめ直そうと誓ったという。

 歌える生徒を少しずつ増やしたいとの思いを教員に伝え、生徒には生徒手帳に載っている歌詞を繰り返し見るよう呼びかけた。今後の具体的な取り組みは「生徒の主体性に任せたい」と考えている。牧野校長は県高校教育研究会の音楽部会長も務める。「教育現場でコロナ禍の弊害は数多くあるが、校歌への影響も軽んじるべきではない。各校で危機感を共有したい」と話した。