大賞を受賞したフードペーパーの商品を手にする五十嵐匡美さん=福井県越前市岩本町の五十嵐製紙

 ものづくりで人や地球環境の幸福につながる国内外の素材を表彰する「マテリアル・ドリブン・イノベーション・アワード2022」で、越前和紙工房の五十嵐製紙(福井県越前市岩本町)が開発した「フードペーパー」が最高賞の大賞に選ばれた。捨てられる野菜や果物を漉き込んだ和紙で、和紙の原料不足に対応しながらフードロスを削減し、循環型社会を志向する取り組みが評価された。

 アワードは、クリエイティブカンパニー「ロフトワーク」(本社東京)が運営する材料開発やものづくり支援のプラットフォーム「MTRL(マテリアル)」が初めて開催。世界各国の企業や研究機関から102点の応募があった。

 フードペーパーは、五十嵐製紙の伝統工芸士五十嵐匡美さん(49)が鯖江市のデザイン事務所「TSUGI」の新山直広代表(36)と協力して2020年に考案。ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、ミカンなど9種類をそれぞれ原料のコウゾと麻に混ぜ、色と質感が反映された和紙が仕上がった。ノートやカード、サコッシュ、小物入れなど5商品を販売している。

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 開発のきっかけとなったのは、原材料不足への問題意識。コウゾの国内生産量は農家の高齢化などで近年激減しており、「少しでも原料の消費を抑えて産地の持続可能性を高めたい」(五十嵐さん)と考えた。

 野菜や果物は、県内でカット野菜を製造する事業所や食材宅配の業者から、規格から外れるなどで廃棄されるものを仕入れている。五十嵐さんは「世の中は『もったいない』であふれていることに気付いてびっくりした」と話す。

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 アイデアの元になったのは、五十嵐さんの次男優翔さん(北陸高校2年)が小学4年から続けていた自由研究だった。ファイルには身近な食べ物からできた紙がずらりと並び、開発にも役立てられた。優翔さんは「取り組んだ成果が認められ、頑張ってきたかいがあった」と入賞を喜んでいる。

 審査員は「社会問題と伝統工芸がちゃんとミックスされ、なおかつ誰でも使えるプロダクトになっている」と講評。MTRLでは上位入賞の素材について、幸福度、生活への満足度を指すウェルビーイングの観点で活用方法を発想するイベント開催を予定している。

 SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりを背景に、フードペーパーは全国の企業からも注目を集め、自社の廃棄物を使った包装紙などの製作依頼が入るようになった。五十嵐さんは「皆さんの目に留まるような使いやすい商品作りをさらに進めて、ごみ問題の力になれたらうれしい」と今後の展開にも意欲を見せている。