動物虐待検挙件数の推移

 4月、警察庁のまとめで、昨年1年間の動物虐待検挙数が過去最多になったことが分かりました。前年比68件増の170件で、統計のある2010年以降で過去最高となりました。虐待された被害動物は、猫が95件で最も多く次に犬で60件、他、馬やインコ、フェレットが対象でした。増加傾向の理由として、動物虐待について社会的な関心の高まりから市民や動物愛護団体からの通報が増えているとのことですが、日ごろから動物虐待の通報を受けている当協会Evaにおいてもその傾向はうなずくことが出来ます。

以前は、動物虐待についてどこに連絡したらよいか分からないといった内容が、当協会に寄せられることが多かったのですが、最近は問い合わせの半数以上が、その時点で動物管理行政や警察などに通報・相談しています。ただ通報しても一向に改善されないので、困り果てた通報者が当協会に連絡してくることがほとんどなのですが。

今回Evaは、独自で昨年度一年間に当協会に寄せられた動物虐待の通報についてまとめました。一年間のさまざまな問い合わせの中から動物虐待だけに関する通報数は、約400件、時節による偏りは特段なく通報数の違いはネットによる拡散によります。
まず通報の情報元は、通報者本人が目撃、あるいは関与した案件が50%、インターネットからの情報が30%となっています。インターネットの場合、58%がSNSで次に多いのがyoutube等の動画サイト。そして加害者は、ペット事業者の第一種動物取扱業、動物愛護団体などの第二種動物取扱業者及び動物病院などの動物関連業が37%で、一般飼い主が36%。動物を虐待している事業者の内訳を見ると、犬猫の繁殖業者が一番多く38%、移動販売を含むペット販売業者が22%、次いで動物愛護団体となっていて、以前に比べ動物愛護団体である第二種動物取扱業者の問題が、ここにきてより多く寄せられてきている印象があります。
被害内容はというと、不適正に飼養するネグレクトが60%で、積極的な虐待(殺傷やむやみに傷つけるなど)は10%でした。被害動物は、犬が47%で猫が38%でしたが、この統計は、事案数をもとに計算しました。その場合、被害動物は犬が最も多い結果になりましたが、全ての問い合わせ延べ数をもとに見ると、猫が圧倒的に多いです。これは、一つの事件でネットが炎上する場合、複数の人物が同様の通報をする傾向があるからで、その場合、特に猫が被害動物である事件の方が炎上しやすい傾向にあります。

こうして多くの通報をいただいたあと、当協会でその後どういった動きをするのかというと、通報者に助言をしたり、内容を聞き取って行政にこちらから連絡を取り改善を働きかけるというケースもありますが、良い結果につながったケースは少ないのが現状です。飼育管理が悪いネグレクトの場合、保健所と話しをしても、虐待の定義、虐待の程度、その辺りの考え方がなかなか一致できず、お互いが虐待だと認識を共有できません。動物愛護法をベースに「虐待ではないか?」と話しても、「虐待ではない」と返され、認識が一致しない悩みがあることも事実です。

一方、警察との関わりはというと、動物虐待の犯罪事実をまとめることが出来る場合は当協会が刑事告発することも多いです。その場合、管轄の警察署に告発状を提出するのですが、その前後で警察担当者と話しをすると、最近では問題意識を共有してくださっている印象を以前より感じます。

ですが、私たちが刑事告発する事案というのは、動物が殺されたり傷つけられているといった殺傷罪(動愛法44条1項)、そしてまともに給餌給水がされていない、病気や怪我をしていても医療にかけない、また安全ではないところに拘束し衰弱させるなど、不適正な管理をする虐待罪、そして愛護動物を捨てる遺棄罪にあたるものです(動愛法44条2項)当然刑事告発をするとなると、それには事実確認の整理と証拠を用意しなければなりませんが、証拠が用意できるということは、その時点で既に動物が命を落としているか危害が加わっている、もしくは現在進行形で苦痛な環境下に置かれているということになります。
前述のとおり、動物を殺したりむやみに傷つける行為は、当協会がまとめた虐待行為のわずか10%で、不適正な環境に置かれ続けるネグレクトは全体の60%、それ以外の通報も、実態はネグレクトが原因と考えれば60%以上になるでしょう。私たちに届く通報には限りがあるし、その中から確固たる証拠を揃えられる案件はわずかです。ということは、どれだけ多くの動物が、こうしている今もなお声をあげることが出来ないまま、人知れず闇の中で耐え生きているか想像に難くないです。不適正な環境に置かれ続けることは、飢えと苦痛が長引きその延長には死があります。

苦しんでいる動物に心を痛めた多くの通報者が「あちこち連絡したが取り合ってもらえなかった」と言い当協会に連絡してくることが多いのですが、話しを聞くと、そうした一部の声が届き、行政が事業所に立ち入りをしたとしても、中に入らず立ち話しだけして帰ったなど、現場を視認しない場合も多いです。それでは、現場の改善は一向に前に進まず、中にいる動物の苦痛が長引くだけ。行政が改善指導もしないことから、勇気を持って内部告発した施設に出入りする従業員自ら、病気の動物に対し自費で治療したり、事業者オーナーにボロボロになった犬猫を譲って欲しいと懇願し保護することも多々あります。ですがそれを継続することは金銭的にもキャパ的にも限りがあるため、やはり立入権限のある行政に、指導や勧告など権限の行使をしていただきたいのです。
その一枚壁の向こうには、助けを必要としている待ったなしの命が置かれているかも知れない、そういうマインドをもって唯一無二の存在に対し向き合って欲しい。命を落としてからでは遅いのです。

※今回の動物虐待統計は、Eva公式ホームページに掲載されています。

⇒連載「杉本彩のEva通信」をもっと読む

  ×  ×  ×

 杉本彩さんと動物環境・福祉協会Evaのスタッフによるコラム。犬や猫などペットを巡る環境に加え、展示動物や産業動物などの問題に迫ります。動物福祉の視点から人と動物が幸せに共生できる社会の実現について考えます。今回のEva通信は、当協会Eva代表理事の杉本彩と共に、日頃活動しているEva事務局長の松井が、動物虐待の通報内容についてお伝えしました。