熱画像とAIを活用した計測結果

非接触式温度計(非医療機器)の計測結果

 福井大学医学部附属病院(福井県永平寺町)の岩崎博道教授らの研究チームが、新型コロナウイルス対策の一つとして普及している非接触式の温度測定機器に関する研究成果をまとめ公表した。岩崎教授は実験結果から「一部の機器は、体温を反映した値を示していない可能性がある」と指摘。精度に疑問符を付け、顔の熱画像とAI(人工知能)を活用した解析で、より正確な体温を推定できるとの分析結果も示した。

 研究チームは同大医学部の感染症専門医や看護師、大手電機メーカーなどで構成。4月22日、オンラインで開かれた同学会総会・学術講演会で発表した。

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 研究では、サーマルカメラやガンタイプの非接触式温度計の精度に着目。2020年12月~21年8月、福井大医学部附属病院で、ワクチン接種後の発熱者を含む職員や来院者の計測データを得た。

 実験では、体の深部体温が反映される「腋窩(えきか)(脇の下)体温」と、医療機器の認証を受けていない市販の非接触式温度計の計測値を比較。50人を調べたガンタイプの値は、腋窩体温との誤差が0・6度。100人を調べたカメラタイプと腋窩体温との誤差は0・89度だった。特にガンタイプは腋窩体温の高低にかかわらず、計測値が36・5度前後に集中する傾向となった。

 岩崎教授らによると、医療機器の認証を受けていない非接触式温度計は、「体温計」に該当しない。外気温による影響なども踏まえ「医療機器ではない温度測定機器は、体温を反映した値を正確に示していない可能性に注意が必要」とした。

 また研究チームは、7~79歳の男女438人を対象に独自の解析モデルを学習させたAIによる体温推定方法も実験した。撮影した熱画像データを額や鼻など顔面の11のパーツに分離し、AIが部位ごとの温度から腋窩体温に近い値を算出。その結果、腋窩体温との誤差は0・17度に収まった。岩崎教授は発表で「さらに検証が必要だが、熱画像とAI処理を活用した計測は有用性が示された」などと結論付けた。

 岩崎教授は取材に「各施設で行われている体温測定は、安心感を得る手段の一つではあるが、機器の精度も考えると、それだけで万全とは言い切れない」と説明。「感染症を防ぐにはさまざまな対策の積み重ねが大切だと再認識してもらう契機になれば」と話している。