「地理的に遠く分かりにくいという北陸の弱みは、『深い旅』という強みにもなる」と話す大井佳名子さん=神奈川県内の創業支援施設

 北陸の魅力を世界に発信しようと、福井県あわら市出身の女性が英語で旅行プランを紹介する動画制作に取り組んでいる。目指すのは、単なる観光地紹介ではなく、北陸ならではの「次代の生き方のヒントを見つけられる旅」の提案。福井県に特化したクラウドファンディング(CF)サービス「ミラカナ」で、撮影資金などを募っている。

 女性は、東京都の広告制作会社でアートディレクターを務める大井佳名子さん(34)。地元あわら市の観光誘客のコンペに関わる中で、身近な観光素材の魅力に気付いた。「北陸の自然は海も山も空も厳しい。それが食材や工芸などの文化を研ぎ澄ます。“本物”に触れたい人には響く」。一方で市町、県単位での誘客に限界も感じた。「新幹線開通に向け、個々ではなく北陸全体で連携しないと発展は難しい」という。

 既に第1弾の動画を自費制作し、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開。「隠された道」の意味を込め「HIDAWAY(ハイダウェイ)」と名付けた。石川県小松市で都会からの移住者が運営するレストランや畑併設のホテルを、10分弱の動画で紹介した。

 静かな山里の自然を映像に収めるとともに「ここで『新しい自分の未来が見えるかも』と思ってくれたらうれしい」とのスタッフの思いもインタビューで伝えた。近くに片山津温泉や山代温泉があり、九谷焼のアトリエで職人の技を見学もできるなど、独自の旅のプランを提案している。英語のナレーションに日本語の字幕を付け、国内の旅行者も引きつける内容にした。

 第2、3弾の動画では、福井県鯖江市の伝統工芸や、あわら・坂井エリアの食を取り上げる予定。ミラカナの目標額は100万円で、カメラマンの人件費や取材費などに充てる計画。支援額に応じ、動画で紹介した施設の宿泊割引などが受けられる。新たな動画完成後はウェブサイトを制作したり、地元の観光業者と連携したりして、旅行商品の販売にも発展させたい考え。

 「働き方の意識が変わりコロナ禍もあって、自然と共生した持続可能な生き方や、ものづくりに関心が集まっている」と大井さん。「北陸は自然と人のバランスが素晴らしく、この場所を選んで生きる人の姿やその価値観を通して、生き方のヒントを得られるはず」と話した。

 【ミラカナ】福井県に特化したクラウドファンディング(CF)サービス。県内でさまざまなプロジェクトを始める人の資金調達を応援するプラットフォームとして2018年に福井新聞社、福井銀行、レディーフォーが連携して始まった。21年から福邦銀行が事業に参画し同年、累計支援額が1億円を突破した。