合同で会社を立ち上げ、シカなどのジビエ活用に取り組む(左から)橋詰裕樹さん、村上大祐さん、西村拓也さん=福井県若狭町海士坂

 福井県若狭町を盛り上げようと地元の若者3人が目を付けたのは、害獣とされる野生動物だった。合同会社を設立し、町内の食肉処理加工施設の指定管理を受託。ジビエ(野性鳥獣肉)を取り扱うレストランなど約10店舗に卸している。

 西村拓也さん(26)、橋詰裕樹さん(31)、村上大祐さん(36)。共に看護師の資格を持つ村上さんと橋詰さんは、先に同県嶺南地域の3市町で訪問看護を展開する株式会社を設立し、運営していた。異業種への事業展開を考えた時、町内で毎年多くのシカやイノシシが焼却処分されていることを知った。

 「田畑を荒らすシカやイノシシも、活用できれば貴重な資源。何か地域に還元できないかと思った」(村上さん)。2人は地元の猟友会に所属し、ジビエにも興味があった。2019年、橋詰さんと幼なじみの西村さんも仲間に迎え、3人で30万円ずつ出資。社名は「もったいない」の頭のアルファベット3文字から「MOT」と名付けた。

 3人は「地域に認められ、若狭町で捕れたものを県内外に届けたい。町の知名度アップにもつながれば」と意気込む。加工品など「もっと」先の展開も見据えている。

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 合同会社「MOT」が指定管理を担う若狭町の食肉加工処理施設「若狭ジビエ工房」。1月17日午前、地元の有害駆除隊メンバーから血抜きされたシカ1頭が運ばれてきた。「ありがとうございます」。施設内のシャッターを開け、橋詰さんが声を掛けた。

 工房は21年10月に本格始動した。1年目は年間220頭のシカをジビエなどに活用することが目標で、12月末までに123頭を手掛けた。2年目以降はイノシシも受け入れる予定だ。

 解体を担うのは施設管理者の西村さん。搬入後、皮と内臓を取り除いて冷蔵庫に1日つるして保存する。モモ、ロース、スネ…。刃渡り約20センチの専用包丁を使い、丁寧に切り分けていく。大阪府内の焼肉店で約3年間、牛肉などの解体を手掛けていたこともあり、作業はお手のもの。シカ肉の魅力を「モモは筋が少なく、たんぱくでおいしい。脂も少ないし女性にも人気なんです」と語る。