【お答えします】福井県獣医師会 開業部会
さくら通り動物病院(福井県福井市)北岡大輔院長
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ワンちゃんが前肢や後肢の先端を舐めたり噛んだりする症状は獣医師が日常的によく遭遇する症状の一つです。注意するとやめるけれど、しばらくするとまた舐めはじめる、もしくは隠れて舐めるということも多いようです。
この症状は「肢端舐性皮膚炎(したんしせいひふえん)」と呼ばれています。原因は大きく分けて以下の3つです。
①肢先の皮膚がかゆい場合
②舐めている部位に痛みや違和感がある場合
③心理的なストレスが原因の場合

①肢先の皮膚がかゆい場合
原因として一番多いものになります。一口に「かゆみ」といっても原因は様々で、細菌やカビ、外部寄生虫などの感染症、アレルギー性皮膚炎などが挙げられます。
②舐めている部位に痛みや違和感がある場合
原因として腫瘍や異物、関節炎などが考えられますが、あまり多くありません。この場合、単独の肢に症状が出るケースが多いです。
③心理的ストレスの場合
ワンちゃんの性格や飼育環境、生活の変化などが心理的ストレスの原因になりやすいです。ここ数年ですが、コロナ禍で飼主様のおうち時間が増えたことがワンちゃんの環境変化となり、症状の引き金になるケースもあります。

ただし、犬は夜間など就寝前に体をきれいに舐めてから眠る習性があり、その場合は正常な行動と言えるでしょう。舐める行動が短時間で、決まった時間帯だけであったり、皮膚や被毛がきれいだったりする場合は問題視しなくてもいいかもしれません。
以上のように原因は様々ですが、舐めている部位の皮膚の状態だけで原因を特定するのは難しい場合が多く、特定には丁寧な問診と検査が重要になります。さらに複数の要因が関与していることも多いです。例を挙げると、舐め始めの当初は暇つぶしでなんとなく舐めているうちに細菌感染が起こり、かゆみを感じよけいに舐める、噛むの症状がひどくなり悪循環を繰り返すような場合です。
いずれにしても原因を特定するのに時間を要する場合もあるので、症状が悪化する前にかかりつけの動物病院に相談されるといいと思います。
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