鉄道の車掌からバー店主に転身した玉村翔平さん=福井県敦賀市本町1丁目の「Cafe&Bar TAMA」

 車掌をしていた福井県敦賀市の玉村翔平さん(32)は2021年春、13年間勤めた鉄道会社を辞めた。古里・敦賀の商店街で念願のバーをオープンするためだった。「大企業を辞めるなんてもったいないという考えは、今の時代には合わない」と悔いはない。

 常連客でにぎわう、こぢんまりとした酒場を巡るのが昔から趣味だった。「人と人のつながりを大切にするバーテンダーの仕事に引かれていた」。会社員時代、業務の合間を縫って1年半、東京のバーテンダースクールに通った。

 「同じ材料と分量なのに、講師と自分のカクテルは風味が違う。深掘りできて面白そう」。バーの世界の奥深さを知ると、自分で店を持つことが目標になった。「楽天的なポジティブ人間」を自認する玉村さんは、一度やると決めたら、やらないと気が済まない。繁華街・本町に空きテナントを見つけて即決。退職したことは家族にも事後報告だった。

 退職金を全額つぎ込み、昨秋から改装を開始。こだわりの詰まった自分の店は2022年1月7日オープンする。店名は「Cafe&Bar TAMA」。ジンとウイスキーを豊富にそろえているのが強みだ。「飲み慣れていない人でも立ち寄れるバーにしたい」と意気込む。

 コロナ禍で飲食業への影響が続く中、「他に新しい店もできている。逆境をチャンスに」と経営者として前向きに捉える。広い店内では展示会やトークライブなども開催できる。以前に比べると活気がなくなっている商店街の盛り上げにも貢献したいと考えている。

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 人混みを避け、親しい仲でも距離を保ち、旅行やレジャーを我慢していた人は少なくないだろう。感染症のパンデミック(世界的大流行)の中、これまで当たり前だった日常を再認識した人、何らかの気付きを得た人もいるだろう。そして、2022年を迎えた。長年の目標を実行に移したり、少しずつ理想を追いかけてみたり。しゃがんでためていた力を解き放つように、福井から新たな一歩を踏み出した人たちがいる。思い思いの歩幅で踏み出したその先に、どんな生き方と希望を見いだしているのだろうか。