可愛い動物が登場するテレビ番組は昔から人気で、動物を出せば視聴率が取れるとの定評があります。確かに、動物の愛くるしい姿や、思わず笑ってしまうコミカルな行動には、多くの人を魅了する力があります。時代と共に番組の企画を変えながら、今もさまざまな動物番組が制作されています。

最近よくあるのは、一般の飼い主さんがSNSに投稿した、ペットの映像を集めたテレビ番組です。日本だけでなく、海外からの映像などバラエティに富んでいますが、SNSからの引用なので、多くの制作費も労力もかからないため、低予算で制作される現在のテレビ事情に合っているのでしょう。

こうした動画も、家族の一員として愛されている幸せそうなペットの表情や姿が映っていたり、ペットがどれほど飼い主さんを好きか、その愛情や信頼関係が伝わってくるものなら、見ている人を楽しく幸せな気持ちにしてくれます。そんな日常の自然な場面なら、動物に無理強いしたりすることはないので、安心して見ていられます。
しかしSNS上には、視聴回数を稼ぐためか、ペットにサーフィンをさせたり、泳げないのに泳がせたり、無理やりとしか思えない不自然な動画が溢れています。そして、そういう投稿動画を、テレビ番組が面白がって取り上げています。

テレビで偶然目にしたある投稿動画は、飼い主が留守の間、サークルを用いて犬の行動範囲を制限しているのですが、犬はそこから出たくて、いつもサークルを飛び超えてしまいます。飼い主は徐々にサークルを高くして、どこまで飛び越えるのか、留守番中の犬を試します。そして最後は、落ちたら怪我をするかもしれない高さのサークルを設けました。犬は、高く立ちはだかるサークルのてっぺんに飛び乗り、その不安定なところから飛び下りるような感じで、必死で乗り越える危なっかしい姿がテレビで放映されました。スタジオで映像を見ているゲストのタレントたちは、みんな大爆笑していましたが、こんな危険な挑戦をさせる飼い主の無神経さに、私はとても違和感を覚えました。

動物番組にはこのように、よく考えれば動物にとって危険なことでも、視聴者も、スタジオで見ているタレントも、悪気なく楽しんで笑っていることがよくあります。もちろん、それをやらせて撮影している飼い主も、そのことに気づいていないのでしょう。
動物にとっては大きな負担や危険を伴うことでも、その動画が人間にとって面白いかどうかで、その価値を判断していて、動物への配慮が大きく欠落していると感じることがよくあります。

また、近年増えているペット系YouTuberといわれる人たちの動物の扱いには、危惧するところが多いです。なぜなら「SNSで手っ取り早く有名になりたければ犬か猫を飼うとよい」という人がいるからです。視聴数を稼げば、もちろん多額の収入を得る可能性があります。利益を求め、動物を飼い始める。そのことから本来その動物が生きている環境を再現できるはずのない野生種を室内で飼い、その様子を日常動画とかほっこり動画といった切り口で見せていることもあります。そうした人たちは、動物の命の尊厳や、動物福祉という動物の幸せについて軽視する可能性が高いです。

最近、ある番組で若い女性タレントがこんな話しをしていました。インスタグラムで閲覧数を上げるため、また「いいね」をもらうために、犬や猫を借りてきて、その動画をアップするタレントがいるのだとか。そんな動物をモノ扱いする人に嫌悪を感じる、と。この話しを聞いてもわかるように、SNS上での動物の不適切な利用が横行しているのだと、改めて知らされます。犬や猫を可愛がることで、やさしい自分をアピールしたいのでしょうか。それとも、単に動物を登場させれば視聴率を稼げるという、テレビと同じ発想なのでしょうか。いずれにせよ、あまりにさもしい考えです。

また最近、こんなテレビ番組をたまたま目にし、テレビの罪深さを感じました。
どこかのふれあい動物園で撮影されたと思われます。芸人に、お腹あたりにナマケモノをぶら下げて登場させ、その光景を周りの人たちが笑いながら見ているという、趣旨のよくわからない番組でした。微笑んでいるような表情のナマケモノを、まるで子どもが親に抱っこしているように見せたいのか人間にしがみつかせ、その絵ヅラを微笑ましいとか面白おかしいとかその珍しい光景をただ撮影したいだけなのでしょうが、とても稚拙で悪趣味です。
本来、ナマケモノは高い木の上でほとんど動かずに過ごします。周りにあるものすべてが天敵であるがゆえに、身を守るため、自分の存在がわからないよう動かないのだそうです。そんな性質のナマケモノを、安心していられる木の上から引きづり下ろし、人間のお腹にぶら下がった状態で、カメラや人の目に晒されていました。彼らは動かないので、その恐怖心は人には伝わりません。けれど、ナマケモノにとってその状況は間違いなく異常で不快なはず。恐怖を感じていてもおかしくない状況です。このようなテレビ側の要求に応じる動物園の倫理観にも疑問です。ふれあいを主とした動物園ビジネスの、動物福祉に対する情けなさや意識の低さも窺えます。

昨今、SNS上には悪意ある動物虐待動画がアップされ、たまたま目にしてショックを受けた人々が警察に通報するなど、大きな騒動となることもしばしばです。
しかし、そういう悪意あるものだけでなく、テレビなどのメディア、SNS上には、こうした悪気ない無意識の動物への酷い扱いが目立ちます。これも、度を過ぎればれっきとした動物虐待の犯罪であることを自覚してほしいと思います。
そして、動物にとってこの状況はどうなのか、動物の立場で、その気持ちや痛みを想像してほしいと思います。きっと、目にした動画や物事の見方が変わるはずです。(Eva代表理事 杉本彩)

※Eva公式ホームページやYoutubeのEvaチャンネルでも、さまざまな動物の話題を紹介しています。

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 杉本彩さんと動物環境・福祉協会Evaのスタッフによるコラム。犬や猫などペットを巡る環境に加え、展示動物や産業動物などの問題に迫ります。動物福祉の視点から人と動物が幸せに共生できる社会の実現について考えます。