筋ジストロフィーで入院生活を続ける南部友紀さん(右)と母の淳子さん=2016年(淳子さん提供)

 全身の筋肉が徐々に衰える進行性の難病「筋ジストロフィー」を患う南部友紀さん(33)=福井県福井市出身=は10年以上、金沢市の専門病院で療養している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、母の淳子さん(69)=福井市=らとの面会が大幅に制限された。不安やさみしさが募り「福井に帰りたい」と病室でつぶやく娘に、淳子さんは「ただ命をつなぐだけでなく楽しいと思える人生を送ってほしい」と、福井県内で医療的ケアが受けられる入所施設の設置を願っている。

 友紀さんは1歳で先天性筋ジストロフィー(CMD)と診断された。福井県内には専門の医療機関がなく、県内の特別支援学校高等部を卒業後、金沢市の医王病院に入院した。

 淳子さんは同じ病気の長男を24歳で亡くした。友紀さんに「少しでも長く生きてほしい」という思いから入院後は毎週末、片道1時間半かけて病院に通って付き添い、身の回りの世話をしてきた。

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 昨年3月以降、コロナ禍で状況は一変した。面会は数カ月に一度、それもわずか10分だけになった。電話などで話はしていたが、友紀さんは精神的に不安定になり夜中に大声を上げるようになったという。2カ月ぶりとなった今年10月上旬の面会で、娘に笑顔はなかった。淳子さんは「見捨てられたと思っているのかな」と漏らす。

 症状は確実に進行している。入院当初は電動車いすで院内を1人で移動できたが、19歳で口から食事を取れなくなり胃ろうをつけた。24歳の時には自宅に向かう途中の高速道路で呼吸器に痰(たん)が詰まり、命の危険にさらされた。会話はできるが体は動かせず、病院からほとんど外に出られない。スタッフに感謝しつつも淳子さんは「延命のためだけの医療を続けることが、本当に友紀のためなのか」と考えるようになった。

 訪問看護を利用し自宅で療養する方法もあるが「家で看護師と1対1で過ごすのでは病院と変わらない」。理想は医療的ケアに加え、他の利用者や地域住民と触れ合える入所施設だ。

 しかし、施設側のハードルは高い。あわら市の障害者施設「ハスの実の家」は医療的ケアが必要な重度障害者の受け入れ準備を進めているが、具谷裕司常務理事(65)は「看護人材がいないことに加え、国からの報酬単価も低い。経営的には成り立たないのが現実」と行政支援の必要性を指摘する。

 淳子さんは、娘に残された時間は決して多くないと感じている。「今日も楽しかったと思って最期を迎えてほしい」。そのための場所はまだ、見つかっていない。