福井県内の学校で部活動の指導に当たる顧問。教員の長時間労働の改善は道半ばだ(写真は本文と関係ありません)

 部活動の地域移行が福井県内中学のモデル校で始まった。教員の負担を減らし、子どもの活動機会も守るという改革はスムーズに進むのか。部活動の未来の形は-。岐路に立つ現場を見つめる。

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 「今思えば、心を壊す寸前だった」。福井市内の中学校に勤める教諭の恭子さん(仮名)は今から数年前、赴任1年目の苦悩を忘れられない。

 自身が高校まで続けたスポーツとは違う競技の部活動の顧問となった。うまく教えられない上、女子部員の生活指導にも悩んだ。専門教科の教材研究もしたいし、担任の業務もある。毎夜9時すぎまで残業し、仕事を持ち帰った。

 手当は月給4%相当の「教職調整額」のみ。4%は時間外労働の8時間程度にすぎない。

 「私生活を犠牲にしてでも指導に熱いのが良い顧問。そんな空気があった」。部活動の予定を書き込む職員室のホワイトボードは、競い合うように埋まっていく。「つらい」。同じ境遇の教諭と悩みを共有して耐えた。

 「ブラック部活」―。過酷な勤務を表す言葉が生まれ、2010年代に社会問題化した。福井県教委の18年9月度の調査で、県内中学教職員の残業は平均74時間に及び、部活動が占める割合は38%に達した。こうした実態を受け、週2日以上の休養日を設けるなど活動時間短縮を促す国のガイドラインが同年策定された。県教委が20、21年度の4~8月を比べたところ、いわゆる過労死ラインとされる、月の残業時間が80時間を超えた教職員数は6割減った。

⇒【解説】休日の中学部活動、地域スポーツクラブ移行の概要

 改善は着実に進むものの、道半ばだ。日本スポーツ協会が今年7月に公表した調査結果では、「週休2日」の未達成は全国の中学で2割、高校では6割もあり、未経験競技の部活動の担当に就く「ミスマッチ」が中学でなお27%に上る。恭子さんの学校でも部活動指導の時間は短くなった。「ただ、私も含め顧問のミスマッチはなお多い。残業も常態化している」と訴える。

 さらなる働き方改革に向け文部科学省が新たに進めるのが部活動の地域移行だ。まず中学校の休日分について教員の手から離し、スポーツクラブなど地域の人材に運営を託す。23年度から全国で段階的に進めるとし、県内では鯖江市、敦賀市、美浜町の計8校が実践研究のモデル校となった。地域の指導者は足りるのか、平日と休日で指導の一貫性をどう守るか-。想定し得る課題を洗い出していく。

 恭子さんが担当する部活動は今年、市の大会で好成績を残した。部活動は授業と違う生徒たちの一面が見える。「子どもたちの頑張る姿がうれしい。私も一層指導に励む」と本心で思う。「教員も生徒も無理なく輝ける場へと、時代に合わせて変わってほしい」。地域移行の行く末に関心を持っている。