「ある種の義務感でやっていた」と自身のゲーム依存について語るイワチャンさん。今でもゲームの広告動画を見ると動揺することがあるという

 「死んでやろうか!」―。自分の首元に包丁を当て、両親に激高した。ゲーム中にインターネットの回線を切られ、頭に血が上った。福井県内の10代学生イワチャンさん(仮名)は一昨年の夏、自分の命よりもゲームが大事になっていた。

 1学期の途中からコントロールが利かない状態になり、プレー時間は1日最低10時間、休日は15時間にも及んでいた。学校の授業中に寝る日が続いた。

 「『ゲームをしたい』ではなく、『しなければいけない』というある種の義務感。楽しいとは全く思っていなかった」。テストの点数は全教科1桁になり、早々に留年が決まった。

きっかけはスマホ

 もともとゲームが大好きというわけではなかった。きっかけは進学と同時に親に買ってもらったスマートフォン。すぐに始めたのがオンラインのシューティングゲームだった。最初は軽い暇つぶしのつもりだったが「強い敵を倒す快感。ストレス解消だった」。あっという間にのめり込んだ。けがで部活をやめ、放課後にやることがなくなったことも依存に拍車を掛けた。

 包丁を持ち出した一件の後、県外の病院に入院し治療を始めた。ゲームができない日々。音楽や雑誌で気を紛らわせていたが、「1日中いらだちが続き、ほとんど眠れなかった」。

 1週間ほどたち症状が落ち着き始めたある日、治療の一環で依存症の患者同士のミーティングが行われた。年上の患者からそれぞれのアルコールや薬物依存の話を聞き、自らの症状も包み隠さずに話した。「自分が依存症だと自覚できた。話してすっきりした」。入院は3カ月に及んだ。

「入院前には戻りたくない」

 イワチャンさんがゲームをやめてから2年が経過した。しかし、病気が完全に治ったわけではない。今でも、自分のスマホの画面にゲームの広告動画が流れると「治したいのに邪魔しやがって」とスマホを投げつけたくなるほど動揺することがあるという。それでも「入院前には戻りたくない」と懸命に闘っている。

 現在は通信制の学校に移り、高校卒業に必要な単位を取得するための在宅学習に加え、大学進学を目指して週3、4日、学校の施設で授業を受けている。

 勉強を続ける中で、新たな夢も見つかった。「大学で心理学を学びたい。カウンセリングに興味がある。自分と同じように苦しむ人の力になりたい」。ゲームにのめり込んでいたあの頃とは全く違う、穏やかな表情で話した。

ゲーム依存症

 ゲームをしたいという衝動を抑えられず、学業や仕事などに重大な支障を来す精神疾患。2019年5月に世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」という名で正式に疾病として認定した。全国89の治療施設を対象に行われた調査によると、19年度のゲーム依存症患者は856人。4年前に比べ3倍以上になっている。

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 特定の何かに心を奪われ「やめたくても、やめられない」状態になる依存症。病気としての認知度は低く「意志が弱いから」といった患者への偏見や誤解は多い。アルコールやゲーム依存症は新型コロナウイルス禍により増加が懸念されている。医学的定義では依存症と認められていない摂食障害などを含め、依存と向き合う県内当事者の姿を通し、正しい理解や支援について考える。⇒連載「依存症と向き合う 福井の現場から」他の回を読む