紅葉した辺りの山を見下ろしながら山頂へ歩を進める

 眼下に広がるのは、赤や黄色、オレンジのパッチワークを施したかのような山々。福井県大野市と岐阜県境の能郷白山(1617m)は一帯でひときわ高いとあって、真っ青な空と織りなす錦の眺望に邪魔は入らない。

 「選ぶとしたら、能郷白山か、荒島岳か」。作家・深田久弥が著書で「かねてから目をつけていた」と記した「幻の百名山」を、山燃ゆる季節に訪ねた。

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 奈良時代の越前の僧、泰澄が白山の翌718年に開いたとされる登山道は、前半と後半でまるで“表情”が異なる。前半はスパルタコーチのような急登だ。

 登山口がある温見峠ですでに標高は1050m。冷えた空気に、顔がきゅっと引き締まる。序盤のブナ林はすっかり葉を落とし、乾いた落ち葉の上を歩くのは、サクサクと心地いい。

 数センチほどの岩くずが積み重なる「ガラガラ坂」に足をとられる。備え付けのロープや、鉄のはしごなしには登れない場所さえある。下着にはじわりと汗がにじむ。

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 1時間20分ほどで「コロンブスピーク」(1492m)に到着。コロンブスの新大陸発見の年になぞらえた名称が楽しい。備え付けの地図によれば、ここからは聖母のように優しい平らなルートに変わるようだ。がぜん「意欲に(1492)」燃えてくる。

 重たい雪の影響で地をはうように成長した「臥龍(がりゅう)ダケカンバ」や、真っ赤な実を付けたナナカマドをめでながら進む。両脇にクマザサが茂った尾根を過ぎればゴール。40分で山頂にたどり着いた。

 さらに5分ほど進むと泰澄が白山権現をまつった「奥の院」跡があった。開山1300年目の2018年に台風で倒壊してしまったというのは残念だったが、岐阜県側に広がる山の連なりは見事だった。

体に染みるヤマメシ「まいたけラーメン」

 メスティン(アルミ製の飯ごう)でまず、ソーセージをさっとゆでる。3分ほどしたら地元特産の九頭竜まいたけ、即席ラーメンを順に投入。頃合いを見て塩味スープのもとで仕上げて出来上がり。⇒ぷりぷりのマイタケ入りラーメン

 肌寒い山頂では、ソーセージとまいたけのだしが効いた温かいスープが体に染み渡る。ソーセージのぱりっとした食感と肉汁がたまらない。近くに登山者がいないことを確認して「ずずずー」と思い切り音を立てて麺をすすった。