福井に凱旋し、舞台あいさつに立つ清水康彦監督=10月24日、福井県福井市のテアトルサンク

 密室に閉じ込められた男女6人が脱出を試みる、菅田将暉さん主演の密室サスペンス映画「CUBE 一度入ったら、最後」が10月22日、全国公開され、監督の清水康彦さん(40)=福井県坂井市春江町出身=が24日、県内3館で凱旋(がいせん)舞台あいさつに立った。作品の軸は「世代間格差」とし「社会、環境に期待せず、自分が変わるべきだ」という自身の思いを反映したと話す映画の見どころや考えを聞いた。

 作品は1997年、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の世界的人気となった映画の“初公認リメイク”。清水監督は「映画のポイントは絞られていた」とし、日本版の今作の軸は「世代間格差」とする。主体性のない若者、自分たちの時代のやり方に固執する上の世代、そんな大人に期待しない子ども。いろんな視点が色濃く描かれる。

 「大人に言われ、勉強して大学、会社に入り、その先があると思ったら大間違いだって言われて、ずるい!って思う。本当は自分が目標を見つけ、自分で進む力が必要。そう気付くのは先のことなんだけど」と、自身の経験も踏まえて語る。作品に登場する「デカルト座標」の哲学者で数学者のルネ・デカルトの言葉「社会を変えようとするより、自分が変化して成長することに努めよ」が監督の頭にあり「作品の指針になった」と明かす。

 出口を探し進む中、閉鎖的な空間で追い詰められる6人。「キューブは人間のメッキが剥がれていく空間。剥がしたときにその人間の個性が露呈する」。出演者ともその認識を共有し、意識して作品作りに取り組んだという。

 舞台あいさつでは「高校卒業後に福井を出て活躍しているが、場所を変えても自分が変わるわけではないと気づいた」と語った。「どこにいても自分と向き合うことができていればいい」との思いからだが、「場所や環境を変えて気付くことや見えてくる自分もいる」。キューブの中で露呈する個性という設定は、自分の思いと作品が重なった、と笑う。

 帰省は2年半ぶりになる。年齢を重ね「福井は自分が求めているものに近いと思える」ようになったという。「福井で映画をつくるようになっていく気がする。自分が育った田園風景だったり、牧歌的な風景の中で人間を描く機会がほしい」。

 「CUBE―」は、テアトルサンクなど県内4館で上映中。

 × × ×

 清水康彦(しみず・やすひこ) 福井商業高校を卒業後、専門学校を経て2001年より映像ディレクターとして、テレビCMやミュージックビデオなど多彩に活躍。CUBEにも出演する斎藤工さんとは、初の長編作品「MANRIKI」(19年)以後、さまざまな作品をともにしている。映画監督の仕事が増えており、斎藤さんが企画、プロデュースした清水監督作品「その日、カレーライスができるまで」は、テアトルサンクで公開中。