休日の昼すぎ、共用リビングで過ごす児童養護施設の子どもたち。虐待を理由に入所するケースが多くを占めている=福井県敦賀市の白梅学園

 全国の児童相談所が2020年度に児童虐待として対応した件数は初めて20万件を超え、統計開始以来30年連続で最多を更新した。福井県でも1113件と、この10年で約6倍に増加。全国では虐待による死亡事件も後を絶たない。国は児相の新設や児童福祉司などの増員を進めるが、虐待への対応は長期にわたり、支援が困難なケースも多い。県内の児童福祉関係者は「児相や施設だけでは限界がある。専門性を持った第三の支援者が必要」と訴える。

 乳児院や児童養護施設を運営する敦賀市の白梅学園。休日の早朝、施設に暮らす小学生の男の子が塩野宏園長に駆け寄り「これ」と、ソフトボール大会の冊子を手渡した。チーム紹介の欄にはその子の名前があり「大会出たんか、すごいなあ」。塩野園長が褒めると、男の子はうれしそうに笑った。

 同施設では0~18歳の子ども43人が暮らすが、うち7割の30人が虐待を理由に入所した。塩野園長は「親にかまってもらえない子どもは自己肯定感が低く、人間関係のつくり方が分からないことも多い。褒めたり感謝を伝えたりして、時間を掛けて愛情の穴埋めをすることが大切」と話す。

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 全国の警察が20年に摘発した児童虐待事件は、2133件と過去最多。福井県警では前年比12件増の59件。19年度には虐待により全国で78人が死亡した。

 国は対策強化のため、各都道府県と政令指定都市に加え中核市へも児相設置を進め、児童福祉司や児童心理司の増員も図っている。ただ、一時保護の判断や親への指導、相談などの対応は一件一件異なり、経験やノウハウが鍵を握る。県内の児相職員は「一人前になるのに10年はかかる。職員を増やすだけでなく、養成する専門学校のような場所も必要では」と指摘する。

 児相や児童養護施設は子どもを保護する際、親と対立することもある。「(虐待の背景にある)子育ての悩みや本音を話してもらうのは難しい」と対応に悩む職員は多い。

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 昨年1月、県内の児相や児童自立支援施設の職員、保育士らが設立したNPO法人「親子関係支援センターやまりす」(福井市)。施設の子どもが家庭で暮らせるように親と一緒に計画を考えたり、子どもが一時的に親と過ごすための外出や外泊に付き添ったりしている。芝康弘理事長は「一時保護などの権限を持たないからこそ親子に寄り添い、細かい支援ができる面もある」と話す。

 「保護の対象とされがちだが、子どもは権利の主体でもある」と語るのは「福井に子どもシェルターをつくる会」(福井市)事務局長の端将一郎弁護士。親から離れたいという子どもが自らの意思で入る「子どもシェルター」と「自立援助ホーム」の開設を目指している。

 端さんは子どもが社会に出て暮らしていけるよう、自立を支えるための場が必要と訴える。「(虐待や貧困など)負の連鎖を断ち切るために、国や地域、民間がどれだけ協力して支援する環境をつくれるかが重要になる」

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