若者の回答で多く使われた言葉を視覚的に強調した表現「ワードクラウド」による分析結果。「無償化」「貧しい」などの言葉が目をひく(UserLocalテキストマイニングで分析)

 もしも10~20代の皆さんが総理大臣になったら何がしたい? 福井新聞社が衆院選に合わせて若者の声を聞いたキャンペーン「#もしも総理U30~投票率上げたい委員会」の分析結果が10月25日、まとまった。福井県内を中心に600人から725件の意見が寄せられ、高校・大学の授業料無償化といった「学び」に関する意見が20%と最多。ジェンダー平等やLGBTQ(性的少数者)への意見も多く、多様性を尊重するU―30(30歳未満)世代の姿勢が浮かび上がった。

 600人の内訳は、中学生2%、高校生57%、大学・大学院・専門学校生34%、社会人5%、不明2%。意見を分析したところ▽学び(20%)▽仕事(18%)▽まちづくり(16%)▽文化(13%)▽健康(11%)▽時間の使い方(10%)▽家族・友人(7%)▽自然(2%)▽食と農(同)―の九つに分類できた。

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 「学び」分野で授業料無償化を求める理由として、「どんな家庭環境でも教育を受けられる希望を」「お金の有無で夢をかなえられない友達を見てきた」といった切実な声が多く挙げられた。「仕事」では、回答者の9割以上が社会に出る前の学生だったにもかかわらず、将来の生活への不安などを背景に賃金アップを訴える意見が目立った。「健康」でも「生理の貧困」がキーワードとなり、三つの分野を通して貧困や格差の問題に対する関心の高さや危機感がうかがえる。

 「まちづくり」では、テーマパークや大型商業施設の誘致を望む一方、「東京一極集中の是正」「過疎地域を盛り上げる」といった地方の未来に目を向け活性化を促す意見も目立った。「インターネット投票の解禁」「内閣の年代幅を広げる」などと、若者の声を反映しやすい制度改革を求める声もあった。

 「文化」では、性的指向や性自認、国籍の違いによる差別解消を求める意見が多数を占めた。「家族・友人」でも同性婚を容認する声が相次ぎ、多様性を認め合う社会を理想とする傾向が強かった。

 「時間の使い方」では、休日増を求める声が多かった。「自然」と「食と農」に対する意見は少なく、福井の自然や食文化の豊かさへの一定の満足感がうかがえた。

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当事者が紡ぎ出す「学び」への声、価値観の変化も

 貧困の一つの性質として「Voiceless/声を上げられない」がある。生まれた環境や境遇によって、自身の声を社会に届けることができないと感じてしまう状態だ。物質的に豊かになった日本でも、この貧困の側面は明確に存在する。そのような中、人口の少ないU30世代の声を取り上げる本企画の重要性は高い。声として一番多かったのは「学びの保障」。当事者として紡ぎ出した尊い声だ。また、特徴的だったのは「ジェンダー・ギャップ解消」や「新しい家族の在り方」への声。これは、U30世代の日本人の価値観の最大の変化が、社会的・文化的な性差への問題意識などジェンダー関係であることに符号する。未来をつくっていくU30世代の声と行動に引き続き期待し、信頼したい。(福井県立大学地域経済研究所、高野翔准教授)

未来への思いを形に…

 「もしも総理になったら何したい?」。衆院選で一人でも多くの若者に一票を投じてもらいたい。福井新聞社のプロジェクトはそんな思いを込めました。多くの声からは将来に対する不安や希望だけでなく、みずみずしいアイデアも寄せられました。政治への関心が低いだけで、未来に無関心な若者はいませんでした。その未来への思いを形にするのが投票です。さあ、投票所に行ってみよう。

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【#もしも総理U30~投票率上げたい委員会】意見は9月25日から10月16日まで、中学生以上の10~20代を対象に福井新聞ホームページの投稿フォームで募った。10月2日には若者の投票の意義について考えるキックオフのワークショップを開き、県内外の学生の意見をユーチューブで配信した。最終的な投稿人数は600人、意見数は725件。意見の分類は、福井新聞などが県民の幸せに対する意識を分析したプロジェクト「ふくい×AI未来の幸せアクションリサーチ」(2019~20年)を活用した。分類ごとの割合、主な意見のほか、背景にある参考データや事例を紙面とインスタグラムで紹介する。福井県立大学地域経済研究所の高野翔准教授が分析のアドバイザーを務めた。