販売するキクラゲを手にする山岸愛子さん=福井県福井市皿谷町

 闘いの場はリングからキクラゲ農場へ―。元プロボクサーの経歴を持つ福井県福井市美山地区の山岸愛子さん(41)が、好きが高じて昨年からキクラゲ専業農家となった。現役時代は自身の体調管理に余念がなかったが、今ではキクラゲ優先の生活スタイル。「ハプニングは多いが、ボクサーで培ったあきらめない気持ちで続けたい」と意気込んでいる。

 坂井市出身の山岸さんは競艇選手になる夢がかなわず、ボクサーになって見返してやろうと一念発起。大阪府に移り、猛練習して31歳でプロボクサーに。6年間、現役生活を続けた。

 山岸さんの好物の一つがキクラゲ。引退後、福井に戻ってからは自宅の浴室でキクラゲの栽培をするほど。同僚や友人に配ると好評だったという。

 現役時代、一緒に汗を流した友人が、故郷の香川県に帰り実家の仕事を継いだ。家業はキクラゲのつくだ煮販売。連絡を取り合っていたところ、自社で栽培を始めるという話の流れで山岸さんに声がかかった。

 「何かの縁かも」と香川県に移り半年間、キクラゲの栽培を担当。そのうち「自分でも販売したい」という気持ちが高まった。周囲の反対はあったが「やると決めたことは実行してきた」経験が背中を押し、福井県内では珍しいキクラゲ専業農家への道を踏み出した。

 昨年8月、祖母の家がある美山でハウス栽培を開始。近くに沢があり、霧が発生するなど多湿を好むキクラゲの栽培に適している。

 中華料理などに使われるキクラゲは、安価な輸入物が大半で国産品は1割程度とされる。それでも安全安心な食材を望む声を追い風に、夏場も寝る間を惜しんで水やりを続けるなど温度・湿度管理を徹底、輸入品に負けない肉厚のキクラゲを育て上げている。

 今年は800個の菌床を栽培。1トン余りの生産を見込む。来年はさらに菌床を増やす予定。「試合で勝つと練習の苦労も報われる。栽培は大変だが、購入してくれる人を見ると同じようにうれしい」と話す山岸さん。炊き込みご飯や野菜炒め、パスタなどさまざまな料理に活用できると紹介し「美山の自然が生み出す環境で育ったキクラゲはおいしい。多くの人に食べてもらいたい」と栽培に闘志を燃やす。

 キクラゲは、市の農林水産物を産地直送するECサイト「ふくいさん」や市内のスーパーなどで販売している。

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