入所者を介助する特定技能実習生。介護人材不足に伴い採用された=福井県福井市蒲生町の「こしの渚苑」

 福井労働局が10月1日に発表した県内の8月の有効求人倍率(季節調整値)は1・85倍。福祉・介護分野は3・74倍で、慢性的な人材不足に悩まされている。県内の介護施設では、サービスを一部休止したり入所定員を減らしたりする動きが見られる。採用や離職防止に向けて試行錯誤を続けるが、関係者は一様に業界のイメージアップと賃金増を訴えている。

 「業界としても努力しているし、現場の職員はやりがいを持って働いている。だが、採用となると田舎の施設は不利。厳しい状況」。目の前に越前海岸が広がる福井市蒲生町の指定介護老人福祉施設「こしの渚苑」。開設当初から運営に関わる長谷川弘光施設長は顔をしかめる。ここ数年、介護職員の新卒採用はゼロ。67人中18人はパートで、全体の高齢化も進んでいる。

⇒福祉・介護分野の福井県内有効求人倍率の推移

 昨年、転職や引っ越しで退職者が相次いだ。人手が足りず、ショートステイを休止し、施設入所者の定員を70人から65人に減らした。現在、福井市内外の30人以上が入所待ちという。

 人材確保へ策は尽くしている。今年から特定技能実習生のベトナム人らを迎え入れた。情報通信技術(ICT)もフル活用。全入所者の起床・就寝状況、心拍数などがタブレット端末で確認できる。介護補助器具も導入し、職員の負担軽減を図っている。それでも「結果(採用)になかなか結びつかない」のが現実だ。

 壁となっているのは、介護福祉業界のイメージ。長谷川施設長は「親が『やめたほうがいい』と言うほど、大変な仕事だと思われている。国が主導し改善してほしい」と願う。別の社会福祉法人関係者も「数年前に比べれば、介護が仕事として身近になっている」としながらも「世間の認知度や社会的なステータスはまだまだ低い」と話す。

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 職員の離職防止に力を入れている施設もある。敦賀市の社会福祉法人敬仁会。市内で特別養護老人ホームや訪問介護など9拠点31事業所を展開、約300人の介護従事者が働く。毎年、新卒者と中途採用者約30人を確保できていて、離職率は約10%だという。

 3年前から、介護従事者の教育や指導を専門で行う職員を設置。2週間程度の研修を受けてもらい、各職場に配属するようにした。来春からは、法人独自の保育所を新設。子どもを持つ職員が安心して働けるよう、環境を整えている。

 人材難や離職の要因として、関係者が口をそろえるのは賃金。県長寿福祉課によると、2019年の県内介護職員の平均月収(賞与除く)は25万800円。全産業平均に比べると2万円以上低い。敬仁会の特別養護老人ホームで働く野村優介さん(23)は「これから先も介護職は必須。新型コロナウイルスで私生活でも自粛しストレスもたまる。ぜいたくは言えないけど、人を増やすには賃金を上げるべきだと思う」と話している。

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