畑仕事をしていたお年寄りに声をかける特定集落支援員の岡本幸男さん(右)。「現状を維持するだけで精一杯」と話す=福井県福井市横越町

 東京一極集中の是正と人口減少克服を目的に、2014年に当時の安倍政権は看板政策として「地方創生」を打ち出した。7年が過ぎ、目立つ成果が乏しいまま政権は2度代わり、トーンダウンは否めない。過疎地域で65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める「限界集落」は、19年4月時点の国調査で全国に2万349あり、福井県内でも17年4月時点の県調査で190に上る。細る地方をどう守るか、模索が続く。

 福井市中心部から車で約40分、美山地区の横越町に暮らすのは4世帯9人。全員70歳を超えている。人影のない集落を囲うように獣害防止のネットが張り巡らされている。

 横越町出身の岡本幸男さん(77)=福井市内在住=は、小規模自治会の運営を支える市の「特定集落支援員」として2020年から古里を担当している。集落で採れるサツマイモが自慢の一つだったが、今は草刈りや用水路の清掃もままならない。美山地区には移住者が増えている集落もあるが、横越町は「現状維持で精いっぱい」と憂う。

 人口流出と高齢化は、市街地の自治会の存続も危うくしている。福井市日新地区で駐車場や空き家が目につく一画に、18年に解散した「乾徳10自治会」はあった。解散時の住民は高齢の6世帯11人。自治会長などの役職が重荷になっていた。

 日新地区は自治会の再編などが比較的進んでいる。日新公民館の廣瀬行雄館長(71)は、災害時の安否確認など自治会の意義を強調した上で「定年後も働くケースが増え、地域に時間を充てられる人が減っている」と指摘。担い手の問題を共有し、自治会の在り方を柔軟に考えていくことが大切と話す。

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 政策頼みではなく、住民主導で生き残りを図る動きも出ている。大野市東部の和泉地区の人口は、この10年で565人から444人(9月30日現在)に減った。65歳以上が約半数を占め、地区全体が「限界集落」に当てはまる。

 全戸でつくる和泉自治会が100%出資し、18年に株式会社「九頭竜の贈り物」を設立した。これからも和泉で暮らし続けたいという切実な思いから生まれた挑戦だった。山菜や穴馬かぶらなど特産物をJR九頭竜湖駅に隣接する道の駅などで販売。飲食店などへの販路も確保し、自立した経済や雇用創出につなげようと活動を続ける。

 会社は黒字を維持しているが、設立時から携わる同地区の巣守和義さん(54)は、持続的な経営には商品開発の新しいアイデアやウェブなどで発信力のある若者が必要と強調する。「人は地域の未来そのもの」と力を込めた。

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 衆院選が10月19日に公示される。地域が直面する課題と未来へ求められるものを、福井の現場から探る。

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