コロナ禍で打撃を受け、事務所を自宅に移した「ジャパントラベル」の滝田隆雄さん=福井県敦賀市内

 新型コロナウイルスの感染拡大と自粛を繰り返し1年半余り、旅行業はまだ暗闇の中だ。年間数千万円あった売り上げは悪化の一途をたどり、9割減に。その代わりに借金だけが膨らんだ。

 福井県敦賀市の旅行業「ジャパントラベル」の滝田隆雄さん(53)はアルバイトと国の月次支援金などを受け、辛うじて生き抜く日々。コロナ対応融資は早期に受けたが、資金繰りは苦しく、追加融資はもう望めない。事業に失敗したわけじゃない。一生懸命頑張っているのに…。カードローン取引停止の通知が来たとき、やるせなさを感じた。

 19年間働いていた旅行代理店を辞め、2015年に独立した。嶺南で社員旅行や行政視察などの団体ツアーを運営。これから従業員を雇って事業拡大しようと思っていた矢先、コロナ禍が直撃した。

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 昨年は県の「ふくいdeお泊まりキャンペーン」や国の観光支援事業「Go To トラベル」があり、個人客で食いつないだ。だが、事業の軸だった団体ツアーは一度も組めていない。各地の壮年会や消防団に誘いを掛けても「万が一感染したら地域に迷惑が掛かる」と断られ続けた。

 コロナ下の旅行の新形態を探り、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」によるオンラインバスツアーを発案。1月に気比神宮の初詣など敦賀市内を巡る動画とライブ中継を組み合わせて配信、その後も3市町のツアーを実施した。事業を軌道に乗せたい思いは強いが、黒字化はまだ遠い。

 4月以降は感染の第4波、第5波で個人客の申し込みもなくなった。受け取った旅行代金を運転資金に充てざるを得ず、送客した旅館への支払いが滞りがちになった。支払金を捻出するため、6月末に事務所を閉じ、母と2人暮らしの自宅に移転。一日を無事に過ごせば得した心境になるほど追い詰められている。

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 同業者はどこも厳しい。福井市の旅行会社はワクチン接種のコールセンターにスタッフを派遣し、バス会社は運転手をトラック運送に従事させていると聞いた。業界では若手とベテランの離職が目立つという。アフターコロナになったとき、観光業の担い手が残っているのかと心配になる。

 9月から県内の観光施設の営業のアルバイトを始めた。面会する県外の旅行業関係者は「国内の緊急事態宣言が解除されても客の動きは鈍い」と口をそろえる。岸田内閣は「Go To トラベル」の再開を検討しているが、感染の第6波でまたすぐに中止されないか、かなり不安だ。一貫性のない政治判断で右往左往したくない。

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 見通しは決して明るくないが、これまでツアーを利用してくれた人の喜ぶ姿が頭を離れず、これからも観光産業に携わっていく信念は揺るがない。一日一日を生き抜くため、政府には業界に特化した手厚い支援を願っている。

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 衆院選が10月19日に公示される。新型コロナウイルス下の福井県内の現場をリポートし、「政治への叫び」を紹介する。

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