「夜中に悩みを聞いてくれる人や場所がほしい」と話す美奈子さん(仮名)=福井県福井市

 食材を購入するのはスーパーより安いドラッグストアと決めている。余計な物に手が伸びるから、買い物かごは持たない。買うと決めていた商品だけを両手に持ち、レジに向かう。お金が足りないと、レジの店員に商品を返す。恥ずかしいとは思わなくなった。

 美奈子さん(50代)=仮名、福井県福井市=は4人の子を持つシングルマザー。昼は事務系の仕事、夜は福井市の繁華街、片町の飲食店で働く。両方合わせて月収は十数万円。子どもの一人は関西の大学に進学した。3年間は月5万円を仕送りしていたが、4年目は無理だった。就職した子どもからお金を借りることもある。

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 新型コロナウイルス感染拡大を受けた福井県の緊急事態宣言で、8月11日から1カ月間、飲食店の営業時間短縮要請があった。週6日働いていた片町の収入は消えた。そのせいで家賃は2カ月滞納。国からの給付金も、新型コロナに対応した生活困窮世帯への特例貸し付けも、結局は借金の返済に回っている。

 夫の暴力が原因で離婚したが、慰謝料や養育費はない。通帳の預金残高が1円のときは、笑うしかなかった。子どもを助手席に乗せて、高速道路のインターチェンジを一区間だけ走って、遠出気分を味わう。旅行の代わりだ。

 ランチに誘われるのが嫌で、ママ友はつくらなかった。行政の福祉担当者は、いろいろ気遣って連絡をくれる。ありがたいけれど、話せるのは日中だけ。夜中に仕事を終え、疲れ果て、車中で泣いてからアパートに戻る。そんなときに、話を聞いてくれる人がほしい。

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 「夜の片町で働くシングルマザーの多くは、昼も働くダブルワーク」。片町で託児所を営む柿木有紀さん(52)は言う。自身も3人の子を持つシングルマザーだ。

 昼は非正規のパートに就いていることが多く、手取りは少ない。時給制だから、子どもの風邪で仕事を休めば、その分収入は減る。「小学生になれば塾やスポ少で、物入りになる。家賃もあり、月10万円程度の収入では、とても生活できない」。柿木さんがブログでコメの無料配布を呼び掛けると、申し込みが殺到する。

 保育園から小学校、小学校から中学校…。子どもの成長の節目でダブルワーク、トリプルワークを始める人は多い。「ひとり親は目が回るような毎日」と柿木さん。困窮世帯への国からの給付金を知らない人もいる。情報からの孤立が、貧困に拍車を掛ける。

 シングルマザーの家庭では、夜中に母親が帰ってくるまで起きて待っている子ども、泣き疲れ玄関先で眠ってしまう子どもがいる。柿木さんは「もっと子どものことを考えて、と言いたいときはある。でも、食べていくため、生活を変えられないこともある。母親を責めるだけでは、問題は解決しない」と話す。

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 衆院選が10月19日に公示される。新型コロナウイルス下の福井県内の現場をリポートし、「政治への叫び」を紹介する。

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