衆院選に向け、福井県内野党の立候補予定者は街頭演説などで支持を訴えている=9月22日、福井県坂井市坂井町大味

 自民党総裁選(9月29日投開票)に世間の耳目が集まる傍ら、必ずしも存在感を示せてはいない福井県内の野党は焦りを募らせている。直後に控える衆院選に向け、各党は「政権の選択肢」としてアピールを続けるが、支持率は低迷したままだ。政治学者からは「野党の主張は無党派層に響いていない」との指摘も出ている。

 「政権が代われば何が変わるか、国民の皆さんに知ってもらう」。野党第1党の立憲民主党の枝野幸男代表は9月7日、衆院選に向けた公約の第1弾を発表し、政権交代した場合に直ちに取り組む新型コロナウイルス感染症対策など7項目を提示した。このタイミングでの発表には、4日前に菅義偉首相が辞意を表明し、報道が自民党総裁選一色になる中、存在感を発揮したいとの思惑があった。

 しかし、会見を見た立民福井県連の幹部は肩を落とした。公約のうち3項目が森友・加計学園、桜を見る会問題など、安倍・菅両政権の疑惑解明に関するものだったからだ。「また政権批判かという印象。もっと日本の明るい未来や夢を語ってほしかった」。この幹部は有権者の関心が高い経済対策や子育て政策を前面に打ち出すべきだと考えている。経済・財政運営などの政策論争が連日展開されている総裁選と比較し「自民党はうまい。歯がゆい気持ちだ」と漏らした。

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 立候補予定者は埋没しないよう躍起だ。福井1区に立民から立つ元県議の野田富久氏(74)は「総裁選の延長線上に即、選挙がある」と気を引き締め、街頭演説を連日実施。22日は坂井、あわら両市の幹線道路沿いなど3カ所に立ち、農業者の戸別所得補償制度復活などを訴え「丁々発止、政策を論議するためにも、保守勢力と野党が拮抗し緊張した政治をつくることが第一だ」と力を込めた。

 「立憲民主も世代交代が必要」と語るのは、県連代表で2区から出馬する斉木武志衆院議員(47)=比例代表北陸信越ブロック復活当選。県内の事業所回りに力を入れ、コロナ対策などに関する要望を直接受けている。「東京よりも地元にいる時間の方が断然長い」と精力的だ。

 1区に出馬を予定している共産党新人で党福井県書記長の金元幸枝氏(63)は「総裁選という一政党のことばかりが報道されていておかしい」と不満を抱きながら、街頭演説や集会を重ねている。「比例票も伸ばして党勢拡大につなげたい」と足場固めを急ぐ。

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 候補者の思いとは裏腹に野党の支持率は上がっていない。共同通信社が菅首相の辞意表明後に実施した世論調査では、自民の政党支持率46・0%に対して立民12・3%、共産3・6%と水をあけられている。

 コロナ対応を巡る菅政権への失望で内閣支持率は下降。自民党が2012年12月に政権奪還して以降では最低の31・8%だったにもかかわらず、野党の支持率は上向いていない。

 「『野党』論」の著者で比較政治学が専門の吉田徹・同志社大学教授(46)は、野党4党が共通政策として合意した、安保法制や共謀罪法の違憲部分を廃止するなどとする「反自民」の政策について「岩盤リベラル(確固たる左派層)を固める作用は持つだろうが、無党派層にはなかなか響かない」と解説。「有権者の関心が特に高い景気や雇用対策、アベノミクスに代わるマクロ経済政策がまだ見えてこない」と支持率低迷の要因を指摘した。