新栄商店街で土日祝日限定のアイリッシュバーを開いているロバート・ヘネシーさん=福井県福井市中央1丁目

客と談笑しながら飲み物を準備するロバート・ヘネシーさん=福井県福井市中央1丁目の「シェルボーン」

 原発、眼鏡、越前海岸。外国語指導助手(ALT)として赴任が決まった時、ネット検索で得られた「フクイ」の情報はこれだけだった。アイルランド出身で福井工業大学の英語講師ロバート・ヘネシーさん(45)=福井市=の当初は1年間と決めていた福井生活は11年になった。「福井の人はいい人、とても住みやすい。ローカルな雰囲気がある」

 母国について知ってほしいと、イベントでアイリッシュウイスキーなどを提供する屋台を出したのが2018年。移動販売も行い、21年5月に福井市の新栄商店街に土日祝日限定のアイリッシュバーを構えた。日本ではなかなか手に入らないウイスキーや音楽のほか、初対面でも気兼ねなく話し掛けるフレンドリーな国民性を紹介している。店名には生まれ育ったダブリンの通りの名前を冠した。

 家族との時間を大切にする母国のスタイルに倣い、オープンは昼から日暮れまで。「心はずっとアイルランド人。文化や言葉、歴史、音楽などリアルなアイルランドを福井の人にも感じてほしいんだ」

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 ヘネシーさんは、ニュージーランドの牧場で働いていた時の日本人との出会いがきっかけで来日を志した。大使館を通じてALTの仕事が決まり、赴任したのが鯖江市東陽中学校だった。

 「最初はとても静かな町だというイメージ。シャイでまじめな人が多くびっくりした」。2010年から5年間同校で勤務し、知人の紹介で15年に現在の仕事に就いた。坂井市の三国サンセットビーチや勝山市のスキージャム勝山などで、大好きなスキーやサーフィンを楽しんだ。

 17年には母国の祝日「聖パトリックの日」にちなんで考案した国際交流イベント「ふくいパトリックスデー」を初開催し、約500人がシンボルカラーの緑を身に着けパレードした。以来毎年開かれ、「誰もが仲間」という懐の深いアイルランド文化に福井の人たちが親しむ場となっている。

 「パレードのイベントは米ニューヨークで移民が始めた。私も移民。福井の友達が一緒に頑張ってくれたから、北陸で初のパトリックスデーを開催できた」。少し引っ込み思案にも思える福井の人たちへ、初対面でも手を取り合える、そんな雰囲気をつくりたいとの思いを形にした。

 生涯の伴侶となる優美さん(37)と出会い、19年には長男を授かった。海や山などの自然に囲まれ、子育てしやすい、住みやすい環境。何よりさまざまな人との出会いがあり、福井での暮らしは10年を超えた。

 「福井はポテンシャルが高い。東京はスペースが少ないけど福井はスペースがある。小さなまちだからこそ出せる(福井らしい)ローカルな雰囲気がつくれると思う」。商店街の一区画先は再開発工事のまっただ中だ。「ただ、雰囲気をつくるのが一番難しい。きれいな建物だけではだめだから。アオッサはモダンで大きくてパーフェクトだけど、雰囲気はどうだろう」

 新栄商店街にオープンさせたアイリッシュバー「シェルボーン」。自ら内装を手掛け、チェーン店には出せない本物の雰囲気を詰め込んだ。昼間だけの営業ながら客足は絶えず、人気を集めている。もっと大きな店を構えたいとの思いも芽生えた。

⇒【写真】アイリッシュバーを構えるロバート・ヘネシーさん

 「福井はナイスプレイス。ダブリンとも、金沢とも違う。商店街には新しいショップや若い人が多い。今からもっとよくなると思う。福井がよくなるのに大事なのは福井の人だからね」。多くの人が気軽に集まる、まちづくりのきっかけになるような場所を「ゲスト」として提供したいと思っている。