底まで見える透明度の高いエリアでパドルをこぐ斎藤鐘吉さん。奥地まで行けることもカヤックの魅力=福井県大野市の九頭竜湖

カヤックを1時間ほどこいでたどり着いた中州で昼食を楽しむ斎藤鐘吉さん=福井県大野市の九頭竜湖

 福井県大野市下半原の九頭竜湖畔からカヤックに乗り込み、誰もいない湖面でゆっくりとパドルをこぐ。谷間に沿うように奥地へ奥地へと旅して、湖に流れ込む小さな川にたどり着いた。

 「ほら、川底が見えるざ!」。陸路ではアクセスできない秘境の地は、神秘的ともいえる透明度。まるで川底を漂っているように見える不思議なエリアだ。

 世界最高峰エベレストなどの登頂経験がある登山家、斎藤鐘吉(さいとう・しょうきち)さん(67)=同県永平寺町=は近年、県内外でカヤックの“冒険”を楽しんでいる。九頭竜湖はお気に入りのフィールドの一つ。「水面すれすれから、自然をずーっと眺められる。登山とは全然違う目線が魅力なんやろね」

 川底が見える一帯に続く中州は、自分だけの港。カヤックを降りて上陸すれば、至福の昼食タイムだ。

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 ひとこぎごとに陸が遠のいていく。“隠れ絶景スポット”を目指した九頭竜湖畔の旅。水の音や着水する鳥の姿といった大自然に癒やされながら、斎藤さんのカヤックはゆっくり進んでいく。

⇒【写真】カヤックを楽しむ斎藤さん

 湖に架かる「夢のかけはし」(箱ケ瀬橋)を見上げ、左手の山の谷間へとゆっくり旋回。山々が奥まで連なり、湖面に映る。「ここは福井のカナディアンロッキーや!」。斎藤さんが元気に笑った。出艇から約1時間後、中州へ上陸。大野の名物「マイタケ弁当」を広げ、笑顔で頬張った。

 斎藤さんは、エベレストや北米のマッキンリー(現デナリ)、南極のビンソンマシフなどに登頂した、福井県人初の7大陸最高峰制覇者「セブンサミッター」だ。12年前、子どもたちに自然体験をさせようとカヤックを始め、自分がはまった。「湖の奥地や海の洞窟のような陸から行けない、見えない自然を体験できる」のが最大の魅力。秘境を自ら探してきた。

⇒【写真】キャンプを楽しむ斎藤さん

 テントを立て、湖畔でソロキャンプをする日もある。「一人だけの世界がつくれる。ランプをともして音楽を聴き、ご飯を作って酒を飲んで、シュラフに入って寝る。朝起きたら湖面を散歩してね」。これから木々が色づく九頭竜湖の秋は特にお薦めという。幻想的な朝霧が見られることもある。

 県内では、光が差し込んで海がエメラルドグリーンになる常神半島の海上洞窟「青の洞窟」(若狭町)も好きなスポット。無人島のある和歌山、イルカのいる石川、船の往来が多い三重の海へも出掛け、シーカヤックの冒険を楽しんでいる。

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