福井県越前市内の高校が生徒の自宅待機に関して保護者に要請した文書。同居家族がPCR検査を受ける場合は、学校に相談するよう求めている

 「福井村田の従業員、家族というだけで、ばい菌扱い」―。新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生し、関連する感染者が180人超に上っている福井県越前市の福井村田製作所武生事業所の関係者から「差別的な扱いに傷ついた」との投稿が、福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)のLINEに相次いでいる。誤解や偏見をどうなくしていくか、あらためて問われている。

 ◆検査陰性でも

 越前市の30代の母親は幼い息子が発熱した週末、かかりつけの小児科診療所を受診しようと電話をかけた。県外滞在歴などの確認事項の最後に聞かれたのは、身内に福井村田の関係者がいるかどうか。父親が同事業所勤務と答えると、「電話口で『あー…』となって、診察できないと言われた」。

 息子は新型コロナ検査に対応している鯖江市の医療機関で診察を受け、陰性と確認された。熱が下がらなかった週明け、再度かかりつけ医を訪ねると、父親が全従業員対象の一斉PCR検査で陰性だったことを説明しても、診察を断られた。せきが出ていた兄も強く求めてようやく「車の中でなら診察する」と言われた。

 「怒りを通り越して涙が出た。一番頼りたかったかかりつけ医なのに」と母親。「職場なども含めまるでばい菌扱い」という。父親は「何のためのPCR検査なのか」と憤り「人目が気になり、会社の制服では外を歩けない」と訴えた。

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 ◆1週間程度

 かかりつけ医側は取材に対し、元々新型コロナ疑いの発熱者に対応していない点を説明する。さらに当時は感染拡大の収束が見込めないとして、同事業所の操業停止と一斉検査が発表されていた。「無症状者から感染が広がることもあり、全体の検査結果が出るまで1週間程度は、関係者の診察を断ることにした。大変申し訳ない思いだが、患者には小さい子どもが多く、感染対策として理解をお願いしたい」と話す。

 武生医師会の山本嘉治会長は医師会として統一の基準はないとし「発熱者対応は医療機関ごとに異なる。医療機関側が患者へ事前に周知するとともに、どこなら診察を受けられるかなど、丁寧な説明が必要だ」と話す。

 ◆泣いて帰宅

 越前市のある県立高校は、事業所の一斉検査が明らかになった8月25日、家族に従業員がいる生徒を帰宅させた。生徒の自宅待機を検討するケースとして「同居家族がPCR検査を受ける場合は、必ず学校に相談を」と事前に保護者に求めており、「今回の対応も特定の企業に限定したものではない」(校長)という。

 ただ、ある生徒の親族は「保護者に説明もなく、いきなり帰宅と登校禁止を告げられ『文化祭に出られなくなる』と泣いて帰ってきた」と憤る。「同じような話を美容室や公的な場所でも聞く。ばい菌扱いで差別だ」と声を荒らげた。

 福井県高校教育課によると、同様の対応を取った高校はほかにもある。今回の一斉検査は、感染リスクを考慮し保健所が行う検査とは性質が異なるとして「一律に自宅待機とする必要はないと、校長会で確認した」という。同課は「デリケートな問題であり、説明不足で生徒や家族を傷つけたなら申し訳ない。各校が感染対策を徹底する中で、今後も理解が得られるよう努めていく」としている。

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