シカが嫌う高音を出す機器「モリオト」の実証実験を始めた安彦智史准教授=8月20日、福井県越前町血ケ平

 福井県の越前海岸の水仙畑を、深刻化しているシカ被害から守ろうと8月20日、シカが嫌う高音を流して侵入を防ぐ機器「MORIoT(モリオト)」の実証実験が越前町血ケ平で始まった。スマートフォンによる遠隔操作で音量や音を流す時間などを自宅から調整でき、高齢化している栽培農家の期待を集めている。

 実証実験を始めたのは、仁愛大学人間学部コミュニケーション学科の安彦智史准教授(35)。遠隔型ネットワークモジュールの研究を進めており、2017年からシカ対策の機器の開発に取り組んできた。

 今回の機器は、学生や東京の情報通信業者HirameQ(ヒラメク)と共同開発した。赤外線センサーでシカの侵入を察知すると、自動でスピーカーから高音が流れる仕組み。音は数種類あり、インターネットを通じて無料通話アプリLINE(ライン)で音の種類や音量を自宅で変えることができる。

 MORIoT(モリオト)は、森と音、IoT(モノのインターネット)を組み合わせた名前。動力源はソーラーパネルで、夜間や天気が悪いときは蓄電池が稼働する。

 実験では親機を中心に、約1ヘクタールの水仙畑を囲むように子機7台を設置した。親機と子機の間で故障や通信障害が起きても自己修復し、通信可能距離は最大150メートルという。

 安彦准教授によると獣害が多い同県越前市奥宮谷の農地で2020年、同じ機器を使って7カ月間実証実験を行ったところ、シカの出没数は激減したという。

 水仙を栽培し「上岬地区を良くする会」の会長を務める滝本正美さん(64)は「シカは水仙が咲く冬に、葉も球根も食べ尽くしてしまう」と現状では打つ手がない窮状を訴える。「60~70代を中心に急斜面で栽培管理に取り組んでいるが、5~10年もすればみんな動けなくなる」と不安を口にし、「実験がうまくいってくれれば本当にありがたい」と期待する。

 実証実験は福井県と越前町が協力。安彦准教授は「デジタルトランスフォーメーション(DX)で水仙畑のシカ害を食い止める力になりたい」と話していた。

※動画で「シカが嫌う高音」を聞くことができます。