東京五輪フェンシング女子エペ個人、初戦の2回戦で韓国選手に勝利し喜ぶ佐藤希望=7月24日、幕張メッセ

 「子どもの目の前で、五輪で勝つところを見せたい」―。佐藤希望選手(35)=福井県立武生商業高校出身、大垣共立銀行=が過酷なトレーニングに打ち込み東京五輪を目指したのは、母親としてのそんな思いからだった。7月24日の東京五輪フェンシング女子エペ個人戦。無観客開催となり、直接見てもらうことこそかなわなかったが、中継の画面越しに「強くてかっこいい」ママの姿を届けた。

 初の五輪出場となった2012年ロンドン大会の翌年に長男(8)が生まれ、ママになって挑んだ16年リオデジャネイロ大会は8位入賞。17年6月に次男(4)を出産し、半年後に練習を再開した。

 18年の福井国体で団体優勝を飾り、引退を考えた。だがリオでは長男を現地に連れて行くことができず、五輪で戦う姿を直接見せられなかったことが心残りだった。自国開催なら子どもたちも会場に来られる。東京へ挑戦する覚悟を決めた。練習環境が整う東京に次男と移り、育児と両立。昨年からは両親の協力で越前市の実家に子ども2人を預け、国際大会を転戦した。結果を残し、3度目の五輪切符を勝ち取った。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で五輪直前に無観客開催が決まり、会場での息子2人の観戦がかなわなくなると「心にぽっかり穴があいた」という。それでも「子どもたちの感染リスクを気にせず試合に集中できる」と切り替えた。

 迎えた大舞台。長男が「ママめざせ金メダル」と力強く書いてくれたプロテクターを身に着けて臨み、初戦で世界ランキング8位の強豪を相手に勝利をつかんだ。越前市のパブリックビューイング会場の最前列で次男と共に応援していた長男は、誰よりも早く立ち上がって万歳。大舞台のママは「いつもより強くて、いつもよりかっこよかった」。

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 長男は、約1年前から市内のフェンシング教室で剣を握っている。まだ幼く、試合途中で眠くなってしまったリオ大会から5年。将来五輪に出たくなったかと聞かれると、迷わず「うん」。ママの勇姿は記憶にしっかりと刻まれた。