飼い主にペットの車内放置を避けるよう呼び掛ける環境省のチラシ

熱中症を疑われる症状で入院する犬や猫は近年増加傾向にあるそうです。地域によっては熱中症警戒アラートも頻繁に発表され、気温と湿度の高い日は、人も動物も危険です。以前、ある小学校へ子どもたち向けの講演に行った時のことです。ペットと暮らしているか質問したら、元気に明るいトーンで「熱中症で死んじゃった」との回答が返ってきた時は、複雑な思いになりました。飼養の仕方に問題があったことは言うまでもありません。正しくお世話できるよう、最低限の知識と飼い主の責任の重さを、しっかり伝えていく必要性を改めて感じました。

以下は、今年環境省が発信している注意喚起です。

「ペットも熱中症にかかることがあるということを御存知ですか?
環境省では、自動車内に残すことによるペットの熱中症の危険性について、広く一般の皆様に知っていただくための普及啓発チラシを作成しました。環境省のホームページ上からダウンロードして自由に御利用いただけます。」

環境省がこのような発信をするのは、毎年多くのペットが車中に残されて、熱中症の危険にさらされているという報告があるからです。

当協会Evaでも、車中に閉じ込められたまま長時間放置されているペットがいるけどどうしたらいいか、という相談や通報を受けることがあります。
以前、このEva通信でも書いたケースですが、「東京高円寺のコインパーキングに駐車している車中に、3日前から犬2匹が閉じ込められている」という通報を受けたことがありました。犬の衰弱を心配しましたが、この時は3月でしたから3日経っていてもなんとか無事でした。
すぐに救出したいと警察や行政機関に働きかけましたが、民法上ペットは飼い主の所有物(動産)であることから、助けたくても法的にさまざまな障害があります。結局、当協会スタッフが現場に到着してから約4時間半後、最終的には警察が飼い主に連絡が取れたことで犬たちは救出されました。 

でも、これが真夏ならどうでしょう。
気温35°Cの炎天下に駐車した車内の暑さ指数は、窓を閉め切った状態でエンジン停止後、わずか15分で人体にとって危険なレベルに達するそうです。ましてや犬や猫の体は毛に覆われていて、汗腺が足の裏などにしかないため、体温調節が難しく暑さにとても弱いのです。特に気温の高い日には、わずかな時間でも、エアコンの効いていない車中にペットを残していると命に関わります。

2020年JAFニュースリリースでは、子どもやペットを車中に残したままのキー閉じこみの救援が、2019年の8月は1ヶ月で144件(内29件がペット)であったと発表されています。このうち緊急性が高いと判断し、通常の開錠作業ではなく、ドアガラスを割るなどしたケースが9件あったそうです。

「車内のペットが誤ってキーロックしてしまった」など、キー閉じこみのケースはJAFの救援数にカウントされています。けれど、それ以外でも「エアコンを切って車内にペットを置き去りにして買い物に行ってしまった」などのケースもあります。JAFが出動しないケースを含むと、さらに多い数のペットが、熱中症になるかもしれない危険な環境下に置かれていると思われます。

炎天下の車中は特に危険ですが、たとえエアコンをつけていても、何かの機械トラブルで停止してしまうかもしれません。また、窓を少し開けていれば大丈夫だと思っていても、急に気温が上昇するかもしれません。少しの時間なら大丈夫などと思わずに、常に最悪の事態を想定することが大事だと思います。

また、炎天下の道端で道路標識のポールに繋ぎ、銀行やコンビニに行く人がいるようですが、あっという間に犬の呼吸は荒くなります。人にとってはわずかな時間のつもりでも、体温コントロールの苦手な犬にとっては、人が思うよりずっと長い苦痛な時間に感じているはずです。
当協会スタッフも以前そんな場面に出くわしたことがあります。コンビニでお水を買って、炎天下で繋がれて息が荒くなっている犬に与えたことがあるそうです。銀行の前なので、おそらく飼い主は銀行に行っていたのでしょう。

夏場のアスファルトの表面温度は、日中57℃まで達することがあるようですから、犬の散歩中にも注意が必要です。炎天下での散歩はもってのほか。たとえ、朝夕の少し涼しくなった時間帯でも、アスファルトの表面温度はなかなか下がりません。大丈夫だと思っていても、人よりずっと地面に近く、肉球にも直接熱が伝わる犬は、飼い主より暑さを感じています。

また、注意が要るのは車中や外出中の熱中症だけでなく、家の中でも同じです。ペットの熱中症の約7割が留守番中であると聞きます。エアコンのかけ忘れや、直射日光にさらされる部屋に置かれることが原因です。また昨今の日本の暑さは尋常ではありません。避難する日陰がない炎天下の外飼いは、熱中症の危険性が極めて高くなります。

犬や猫の平均体温は人より高く、38~39度ほど。体温の変化には、この季節は特に気をつけたいものです。人と同じように高齢や基礎疾患があると熱中症にかかりやすいので、さらに注意が必要です。熱中症にならないために、散歩は早朝や日没の時間にすること。地面を触って熱さを確認してあげる。部屋の中は通気性をよくし、犬種や猫種によっても適温は多少異なりますが、室温は「25度」湿度は「50%」を目安に保つことがすすめられています。
特に、短頭種の犬(ブルドッグ・パグ・シーズーなど)や猫(ヒマラヤン・ペルシャ・エキゾチックショートヘアーなど)は体温調整が苦手なので、気をつけてほしいと思います。

私もフレンチブルドッグの愛犬と暮らした経験がありますが、私が寒いと思うくらいでちょうどよく、夏は24時間冷房を切ることはありませんでした。特に、高齢になってからは短頭種気道症候群という疾患を発症したので、夏場は呼吸が荒くならないよう、さらに注意が必要でした。車で病院に行く時も、エアコンでガンガンに車内を冷やしました。愛犬が快適でいられる温度を保つと私はぶるぶる震えるくらい寒かったので常に上着を持参。少しでも温度が上がれば、すぐに呼吸に現れるので、いつも細心の注意を払っていました。

ペットの熱中症の初期症状はハァハァと息が荒くなりますから、呼吸と体温を注意深く見てほしいと思います。熱中症が疑われたら、速やかに涼しい場所で休ませ、保冷剤をタオルなどで包み、大きな血管の通っている脇の下や首、脚の付け根などを冷やすとよいそうです。重症化すると、30%が死亡するという報告もあるので、熱中症の兆候を見逃さないように、そして重症化する前に適切な処置をし、獣医師の診察を受けてください。

ペットを守れるのは飼い主だけ。ペットの体調管理は、飼い主の当然の責任です。飼い主の不注意や怠慢による事故が起こらないように、常にペットの目線になって、危険を察知してほしいと思います。
高温の車中に閉じ込められた時、炎天下で待たされている時、どんなに苦しいか想像してほしいのです。ペットは、自分で車のドアを開けることも、部屋の冷房をつけることも、助けを呼ぶこともできません。
ただただ飼い主を信じて、その状況を受け入れ、自分の命を飼い主に委ねてくれているのです。その責任を充分に理解し、重く受け止めてほしいと思います。(杉本彩)

※Eva公式ホームページやYoutubeのEvaチャンネルでも、さまざまな動物の話題を紹介しています。

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 杉本彩さんと動物環境・福祉協会Evaのスタッフによるコラム。犬や猫などペットを巡る環境に加え、展示動物や産業動物などの問題に迫ります。動物福祉の視点から人と動物が幸せに共生できる社会の実現について考えます。