新型コロナ感染者の主な退院基準と濃厚接触者の健康観察期間

 「健康観察を終えて職場復帰する際、会社から自己負担でPCR検査と陰性証明を要求された」。福井新聞の調査報道「ふくい特報班(通称・ふく特)」に、新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者になったという福井県内在住者から投稿が寄せられた。投稿者は「ほぼ強制的に自費で検査を受けざるを得なかった。陽性だった人でも『職場復帰に検査や陰性証明は不要』とされているのに納得できない」と、疑問や不満を抱えている。

 投稿者は今年、同居家族が陽性と判明し、濃厚接触者に認定されたという。実質公費で賄われるPCR検査を受けて「陰性」。保健所から2週間の健康観察を指示され、自宅待機した。

 健康観察終了が迫ったころ、勤務先から「PCR検査を受けて陰性証明をもらってほしい」と告げられた。保健所に相談すると「症状もなく健康観察期間を過ぎれば、検査も陰性証明も必要ない。それでも検査する場合は自費でお願いします」との回答。投稿者は結局、復帰予定日から数日後、医療機関で検査を受けて陰性証明書を出してもらった。約2万円の費用は自己負担。「検査のため職場復帰も遅れた。必要とされていない陰性証明を要求するなら事業主も一定の負担をするべきでは」と漏らす。

 厚生労働省は「就業制限解除に関する事務連絡」(2020年5月)で、感染者の職場復帰について「解除時のPCR検査は必須ではない」「職場に証明を提出する必要はない」と通知した。つまり「職場復帰の際に、検査や証明は不要」。一定期間を過ぎれば感染力が失われることが明らかになっているためだ。

 一方で、濃厚接触者の職場復帰に関しては法令や国の事務連絡で明文化されておらず、「一定期間発症しなければウイルス感染はなかった扱いになる。陽性者の退院基準と同様、行政検査は行っていない」(福井県の担当者)。県や保健所には投稿者と同様の苦情が複数寄せられているという。

 労働問題に詳しい海道宏実弁護士(福井弁護士会所属)は「法令や国の通知で求められていない検査や陰性証明は会社都合であり、会社側が費用を負担するべきだろう」と指摘。「労働契約法では、使用者には労働者の安全配慮義務がある。仮に職場での感染を防ぐ目的でも、濃厚接触者や他の従業員への安全配慮は会社の義務であり、労働者が負担するべきものではない」と話す。「国が指針を出すのが望ましいのではないか」とも付け加えた。

 福井労働局雇用環境・均等室の担当者は「検査やワクチン接種などに関し、不当な扱いに当たるかどうか、悩ましい場合は総合労働相談窓口=電話0776(22)3363=に相談してほしい」としている。

■濃厚接触者の方が復帰遅くなるケースも

 新型コロナの陽性者は感染症法で「入院勧告」の対象になるのに対し、濃厚接触者の健康観察は「協力要請」にとどまる。症状が軽快すれば最短10日間で退院できる陽性判明者より、濃厚接触者の方が社会復帰が遅くなるケースもある。

 厚労省による新型コロナ感染者の退院基準は、無症状なら「検体採取日から10日間経過」、症状のある人は「発症日から10日間経過し、かつ症状軽快から72時間経過」で退院が可能だ。2回のPCR検査で陰性を確認すれば退院までの期間がさらに短くなる基準もある。

 一方、濃厚接触者の健康観察期間は「陽性者との最終接触から14日間」。福井県によると、これも厚労省の通知に基づいているという。

 県内の新型コロナ感染者は累計1400人、濃厚接触者は同3700人を突破。濃厚接触者や接触した可能性のある人らを対象にした県の検査は6月末時点で、3万7千人を超えた。投稿者のような悩ましい状況は、誰もが直面するかもしれない身近な問題になりつつある。

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