マイクロコンピューターを取り付けたハンマー

 福井県の福井高専電子情報工学科4年の学生2人が開発した打音検査サポートシステム「D―ON(ディーオン)」が、全国高等専門学校ディープラーニングコンテストで最優秀賞を受賞した。AI(人工知能)を活用してトンネルや橋の検査を「誰でも、簡単に、低コストで実現」できることが高く評価された。開発者の一人、前川蒼さん(19)は起業して、このサポートシステムを事業化したい考え。

 全国の高専生が、AIなどを駆使して制作した作品の事業性を「企業評価額」という独自の尺度で競った。投資家らが審査員を務め、D―ONは企業評価額6億円、投資総額1億円の最高評価を受けた。

 D―ONは「全ての老朽化から人の命を守る」をテーマに、前川さんと小川大翔さん(19)が村田知也講師の指導を受け開発した。

 マイクロコンピューターを取り付けたハンマーで構造物をたたき、その打音データを専用のウェブページにアップロード。正常音と異常音を学習したAIが判定し、どちらの音に近いかを割合で示してくれる。

 ウェブページに打音データが集まるほどAIの習熟度が高まり、判定の精度も上がる。木材や金属にも応用でき、将来的には空き家や水道管、遊園地のジェットコースターなどの点検も視野に入れているという。

 従来の打音検査は熟練の技術者の経験が頼りで、システムも大掛かりで高額になるといった課題があった。審査員からは「ここまで小型化できたことに大きな価値がある」「この手軽さは、グローバルな展開の可能性を感じる」など高評価が相次いだ。

 前川さんは6月17日、村田講師らと鯖江市役所を訪れ、佐々木勝久市長に受賞を報告。事業化に向けて「笹子トンネル(山梨県)事故を受けトンネルや橋は5年に1度の点検が義務付けられるなど、需要はある」と展望。業者だけでなく一般の人も手軽に自宅などの点検できるよう「3年後にはホームセンターでも売られるようになれば」と期待を込めた。

 コンテストには全国から43チームが参加。2度の予選を勝ち抜いた10チームがオンラインで行われた本選に進んだ。D―ONは技術審査員賞と若手奨励賞も受賞し、最優秀賞の副賞として起業資金100万円が贈られた。