福井県越前市の茶臼山(出典:国土地理院ウェブサイト)

初夏をおもわせる陽気の5月にとおく白山を眺めてから15年、友人が山登りをすることがわかり「私も登りたいんです!」と頼みこんだのが年末。「ほんとに(こんなインドア派人間が)登るのか?」と疑心暗鬼な友人を説得し、初めての山に向かいます。

季節は3月。目指したのは福井県越前市の茶臼山(標高103m)。茶臼山は古墳公園(茶臼山ふるさと公園)としておなじみの方も多いかもしれません。登山のガイドブックなどには掲載されることもおそらくない、名前のとおり山というより公園です。

⇒【地図】越前市にある茶臼山の位置

当時の私は、登山靴はおろか運動靴(←この言い方がもう・・・)も持っておらずパンプスや草履以外の履き物はベージュのスニーカー1足のみ。そのスニーカーを購入したのは雑誌で紹介された『花柄ワンピースの足元はスニーカーでカジュアルダウン!』という記事に影響をうけてのことで、使用するのは年に1回あるかないか。でも山に行くならこの靴しかない。
足元はそのスニーカー、薄手のセーターにもこもこフリース、大学生時代のキュロットスカートに80デニールの黒タイツ。

いま思えばとんちんかんな恰好です。
とにもかくにも初めての山。緊張MAXな私は「お菓子を買っていこう」という友人の言葉に「ええっ!なにをのんきなことを!!」と怒りまじりで驚いたり。

薄曇りの空のもと、緊張しながらいざ茶臼山へ。
よく整備された道がつづいて、古墳の説明看板などを眺めながら歩くとほどなく山頂。木々の間越しに日野山を眺めながらグリコのコロンと午後の紅茶ミルクティーでおやつ時間。このときのコロンの美味しさは格別でした。
今回の記事を書くにあたって改めてしらべてみて、茶臼山には北峰と南峰(135m)があり、はじめて登ったのは北峰だったと知りました。
緊張のわりにあっけなく下山となり興奮冷めやらぬ私に友人が地図(道路地図)を広げて「ちかくに岡本山っていうのがあるみたいだから行ってみよう」。

またまた緊張しながら近くの岡本山(標高83m)へ。
到着したのは岡本神社。
神社ですからまずはお参り。山へはどこから?と思っていると友人は参道をもどり鳥居をでて左のほそいほそい階段へ。
「え?え?」「いいの?こんなところ入っていいの?」と思いつつ階段脇の椿に見惚れたりしながら友人のあとを追います。
階段に落ちている茶色く乾いた細長いサヤが藤の花の種だと教えてもらったりしながら歩いていくと階段がおわり祠があります。ここで終わり?と思いましたが山頂へつづく道は祠の横から続いているとの友人の言葉に半信半疑でその先へ。

山頂にむかうその道は神社だけに杉が多く、土を覆いかくすほど落葉と落枝が幾重にもかさなり積もっており足裏にはフコフコとした柔らかな感触。パンプスで歩く舗装路とはまったく異なる感触に心がおどります。

山頂には桜の木とベンチ。すこし傾いたそのベンチに腰掛けていると公園であそぶ子どもたちの声が耳に届きます。「あの公園!さっき横を通ったときは大きく見えたのにあんなに小さくみえる!!」ひろげた手のひらよりも小さな三角の公園。
顔を左にむけると鯖江方面がひろく見渡せました。

ほんの少し登っただけでこんなに見えるものが違う。
あこがれていた山。今日は山ともいえない山かもしれないけれど、山にはこんな世界がひろがっているんだと思いました。

さて、そんなたのしい山デビューですが、山を歩くって暑い。
もこもこフリースはすぐに脱いで腰に巻いて、でもセーターは脱げない。顔を真っ赤にしてふぅふぅ言いながら登って、そして休憩で足をとめると汗をかいた身体に風がつめたくて震えるほど。

初めての山での気づきはたくさんありましたが、まずは着ていくものについての反省点が多くありました。

服装について里山でも心がけたいこととして

◆歩き出して5分もすると暑くなります(雪山でもお天気がいいと半袖で歩けるくらいです)。
→温度調整のできる服装で
→めんどうがらずに脱いだり着たりをくり返しましょう
◆脚の曲げ伸ばしがしやすいボトムを選びましょう。
 →ジーンズなど厚くて保水性のある生地のものはNG
 →スポーツタイツにハーフパンツは動きやすくておすすめです
◆帽子はかぶったほうがいい
→日差しは日焼けするだけでなく体力を消耗します
→枝にあたまをぶつけたりしたときの保護にも
◆靴は・・・はじめから登山靴で登るにこしたことはないのですが、まずは手持ちのスニーカーとかでもいいんじゃないでしょうか。登山靴は高価です。購入するふんぎりがつかないまま山を遠巻きにながめているよりも、まずは山を歩いてみて「滑るなぁ」「足首に負担があるなぁ」と思ってから登山靴を履くと「登山靴ってすごい!!」と値段以上の価値をより実感できる・・・かも。

そして、この日は茶臼山でも岡本山でもだれにも出会わなかったのですが、
山歩きの初歩的なマナーとしてお伝えしたいことがあります。

◇山ではあいさつしましょう

 ふだんとは異なる山のなか。動物にも驚かされますが人間とふと出会ったときに驚くこともあります。お互いに「こんにちは」とあいさつしましょう。これは礼儀上のことだけではなく短い会話でも万一の遭難時の貴重な情報となることもあり、互いの安否や体調の確認のためでもあります。

◇登りが優先

 登山道ですれ違うときは登りが優先です。
 下りのときに登ってくる人の姿が目に入ったら必ず立ち止まりましょう。
 「広い道だからだいじょうぶ。このまま歩いてすれ違おう」とは思わずに。
 待つときは登山道の谷側ではなく山側に身をよせます。

◇山によってはお盆やお彼岸のときの登山は控える

 これは個人的なおもいです。そしてオカルト的なことでもありません。
 里山、とくに里山の登山口は地元集落の方々の生活の場です。
 ふだんでも「おじゃまします」の気持ちがたいせつだと思いますが、とくにお盆やお彼岸のときはお墓参りの方の駐車スペースを登山者の車が占拠してしまうことがないように。

ごみを持ち帰ることは当然ですが、食べ残し、そして飲み残しを捨てることも「ダメ!ぜったい」です。

だいすきな山がそのままであり続けてくれるように、山歩きが許されることに感謝して。

(登山用品店「遊山行」=福井市 服部佐和子)